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オペラを楽しむ

ドン・カルロを演出する、新進気鋭の芸術監督 ロッテ・デ・ベアさんの革新 演出家ロッテ・デ・ベアさんによるグランドオペラ『ドン・カルロ』が日本で披露されます。オペラの新時代を築くロッテさんにインタビューします。 取材・文:安田薫子

Photo: Philipp Ottendörfer
『ドン・カルロ』を手がける演出家ロッテ・デ・ベアさん

ペラとの出会いは7歳。「オーケストラの演奏が始まった途端、オペラに恋をしました」。やがて「演出は天職」と感じるように。大学卒業後は強烈な個性を持つ鬼才演出家、ペーター・コンヴィチュニーの下で研鑽を積みました。「彼は私のメンター。台本と音楽に詳細で鋭い分析をし、オペラの伝統にとらわれない演出へと行き着きます。厳しい人ですが、歌手との共同作業の仕方、歌に力を与える方法、音楽の力で厳密なリズムに力を与える方法など、惜しみなく知識を分け与えてくれました。私たちは美的感覚も人間観も全く違いますが、彼の演劇表現には親近感を覚えます」。

ロッテさんは2022年9月からウィーン・フォルクスオーパーの芸術監督に就任し、新風を吹き込んでいます。コロナ禍で在宅中、人生の〝やるべきリスト〟を作成したそうです。「一つ目はオペレッタ。芸術は人々に笑顔をもたらすので今のような困難な時代に役立ちます。二つ目はフォルクスオーパーの客層を広げること。様々なオペレッタを催し、今や3分の1は30歳以下の観客です」。

そんな彼女が日本で披露するのが『ドン・カルロ』。「心に響くヴェルディの音楽が、エリザベッタとドン・カルロの愛を深い感情のレベルで理解させる一方、絶望的な難民にも共感させて、愛に背を向け難民を救おうとするエリザベッタを理解させます。オペラを通してジレンマに陥るのです」。宗教戦争の時代と自身の思いの間で苦悩する登場人物たち。民主主義のプロセスが機能しなくなり、国々がナショナリズムに傾いている現在、この物語は私たちの近未来にも通じるとロッテさん。「ご覧いただき、世界が悪い方に向かわないよう、芸術が目的を果たすよう皆で考えられたら」。

ロッテ・デ・ベアLotte de Beer

1981年生まれ。アムステルダム芸術大学で演出を学ぶ。演出デビュー作『ペンテジレア』で一躍脚光を浴びる。演出家ペーター・コンヴィチュニーとともにライプツィヒ歌劇場で演出に従事。欧州の主要歌劇場で数多くの演出を手掛け、高い評価を受けている。アムステルダムでオペラカンパニー「オペラフロント」を立ち上げ、若い聴衆の育成に努める。2015年インターナショナル・オペラ・アワード最優秀新人賞、2018年国際パフォーミングアーツ協会による功労アーティスト賞などを受賞。2022/23シーズンから5年間、ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督を務める。私生活では5歳の娘を持つ母。

東京二期会オペラ劇場

ヴェルディ『ドン・カルロ』

オペラ全5幕 日本語字幕付原語(イタリア語)上演
指揮:レオナルド・シーニ※  演出:ロッテ・デ・ベア
合唱:二期会合唱団  管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
東京文化会館 大ホール
2023年10月13日(金)18:00、14日(土)14:00、15日(日)14:00

→2023年10月『ドン・カルロ』東京文化会館公演詳細はこちら

※…当初発表の指揮者から変更になっております。

『ドン・カルロ』が横須賀と札幌でも公演決定!

YOKOSUKA

2023年9月30日(土)13:00 開演
よこすか芸術劇場

ヨーロッパの劇場にも比する、
日本有数のオペラハウス

「よこすか芸術劇場」は、京浜急行・汐入駅前、徒歩1 分の好立地に、国内有数のオペラハウスとして1994 年に開館しました。国内外のオペラのほか、バレエ、コンサート、歌舞伎、能に至るまで様々な舞台芸術を上演してきました。大小2つの劇場を持ち横須賀の文化の発信地となっています。大劇場の客席は馬蹄形のためどこからでも舞台が近く、その風格はヨーロッパの劇場を彷彿とさせます。優れた音響と臨場感を併せ持ち、オペラ観劇に最適な劇場として、県内はもとより県外からも多くの観客が訪れます。

住所 神奈川県横須賀市本町3-27
TEL 046-828-1600(8:30~19:00、第2水曜日休)
https://www.yokosuka-arts.or.jp/

上/横須賀の芸術文化の発信地。 左下/風格ある大劇場。
右下/2019年東京二期会オペラ、プッチーニ『蝶々夫人』のカーテンコール。

チケットのご予約・お問い合わせ

横須賀芸術劇場電話予約センター TEL 046-823-9999(10:00〜17:00)

SAPPORO

2023年10月7日(土)14: 00、8日(日)14: 00 開演
札幌文化芸術劇場 hitaru

北海道初の迫力ある多面舞台で、
オペラの世界にひたる

2018 年に開館した「札幌市民交流プラザ」内にある「札幌文化芸術劇場hitaru(ヒタル)」は、市民が存分に文化芸術に“ひたれる”場になるようにという願いからヒタルと名付けられました。3層バルコニー構造を持ち、オペラ、バレエなどの舞台芸術に最適な北海道で初めての多面舞台です。一般社団法人日本音響家協会が施設利用者にとって使いやすいホールを選定する「優良ホール100選」に選ばれました。ステージと客席が近いため、舞台の臨場感を遺憾なく楽しめます。

住所 北海道札幌市中央区北1条西1丁目
TEL 011-271-1950(9:00〜17:00、休館日を除く)
https://www.sapporo-community-plaza.jp/theater.html

ⓒ武田博治

左/劇場は、札幌の文化芸術活動の中心地、札幌市民交流プラザ内に。
右上/華麗な3層バルコニー構造。
右下/2018年札幌文化芸術劇場 hitaruこけら落とし公演、共同制作ヴェルディ『アイーダ』。

チケットのご予約・お問い合わせ

道新プレイガイド TEL 0570-00-3871(10:00〜17:00 日曜休)