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オペラを楽しむ

二期会70周年特別企画〈第2回〉ミュージカル俳優 田代万里生さん×バリトン 今井俊輔 スペシャル対談 いまの歌、最先端のエンターテインメントを共に生み出そう!

大学の同級生で、いまも親交のあるお二人。
オペラとミュージカルの垣根を超え、
エンターテインメントの魅力やあり方を語ります。

田代 入学式で今井さんと会ったとき、すでに40歳くらいの風格がありました。俺は誰とも群れない、やるべきことがあってここにいるというオーラを漂わせていました。

今井 これほど整った顔で、歌もとびきりうまい。まさに王子というのが僕の万里生の第一印象。僕はオペラのこと何も知らなくてね。万里生含め、同級生はみんな優秀。最初はやっていけるのかなと思いました。

田代 声の重みの違いもあり、接点はあまりなかったのですが、馬が合ったのかな。テーマパークにも一緒に遊びに行き、今井さんの恋の行方を見守ったね。あの日の今井さん、かわいかったなあ(笑)。

今井 いやいや(苦笑)、僕も万里生の知られざるエピソード、いっぱい話したい!

田代 懐かしい、青春してたね。そんな仲間が活躍しているのは誇らしいです。今井さんの二期会デビュー作『マクベス』は、初日に鑑賞して、その感動を伝えに誰よりも真っ先に楽屋に会いに行った!

今井 僕はタイミングが合わず、万里生の生のステージは観られてないけど、テレビで姿を見るたびに頑張っているなって、刺激になりますね。

田代 今井さんはいまやオペラ界を背負って立つ男なのにユーチューブもやり、「こころの歌」(BS日テレ)ではジャンルも幅広く、レパートリーは2000曲。ひと昔前だったら、オペラだけをやりなさい!という風潮があったけれど、もはや誰よりも弾けようという心意気を感じます。

今井 オペラは敷居が高いというイメージが、どうしても強い。ミュージカルだって歌謡曲だって音楽。エンターテインメントのひとつとして、もっといろいろな舞台を身近に楽しみに来てもらいたいですね。

田代 カテゴライズする必要性はないよね。もちろん古き良き伝統を受け継ぐことも大切だけれど、過去のものを守るだけではなくて、いまの時代ならではの新しい何かを生み出すことも僕らの使命だと思っています。

今井 そう、いまや令和だよ。新しい一歩を踏み出さないと。万里生と一緒になにか取り組めたらいいなと思います。

田代 ミュージカルのファンが今井さんの本気の歌声を聴いたら震えますよ。いままで知らないオペラの魅力に気づくとともに、音楽の楽しみが広がるはずです。

今井 まずは王道。それと2.5次元の舞台、たとえば『北斗の拳』とかね。

田代 似合う(笑)!伝統芸能の歌舞伎もアニメに挑む時代。スーパー歌舞伎ならぬ、スーパーオペラ的な作品も面白そう。

今井 専用劇場作りたいね。でもライブハウスでも公民館でも関係なく、さまざまなホールで演じていきたいですね。

田代 秋に『蝶々夫人』をやるんだよね?僕は(話の舞台となる)長崎生まれですし、子どもの頃、父の公演で演出家から急遽、子役の代役を頼まれたこともあるんです。ファミコンを餌にね。それが僕の人生初の出演料(笑)。

今井 すごい縁あるじゃない!『蝶々夫人』出てよ。観に来た人にしか味わえないシークレットゲストとか!?

田代万里生(Mario Tashiro)

東京藝術大学音楽学部声楽科テノール専攻卒業。15歳からテノール歌手の父より本格的に声楽を学ぶ。大学在学中の2003年、東京室内歌劇場公演オペラ『欲望という名の電車』で本格的にオペラ・デビュー。2009年にミュージカル『マルグリット』のアルマン役でミュージカル・デビューを果たし、以降数々の作品に出演。第39回菊田一夫演劇賞受賞。

今井俊輔(Shunsuke Imai)

東京藝術大学首席卒業、同大学院修了。イタリアにて研鑽。近年東京二期会では『ジャンニ・スキッキ』『ファルスタッフ』各題名役、『外套』ミケーレ、『トスカ』スカルピア、『椿姫』ジェルモン等、バリトンの主要な役で出演、ド・ビリー、ルスティオーニ、バッティストーニら著名指揮者から評価を受ける。9月『蝶々夫人』シャープレスで出演予定。二期会会員

SPOT DATA

今回の対談場所は、渋谷のセルリアンタワー東急ホテル。東京のカルチャー、グルメの発信地として、さまざまな新しい取り組みを行い話題を集めるホテル。高層階の客室やレストランからの眺望も魅力のひとつ。