TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

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オペラを楽しむ

『タンホイザー』吟遊詩人の愛と苦悩を描いた『タンホイザー』が3年ぶりに戻ってきます。
今回出演のおふたりは幼少時代、野球大好き少年だったとか。
舞台とは違う、意外な一面を話してくれました

タンホイザー役を演じる テノール 片寄純也 2024年2月29日(木)、3月3日(日)出演

音楽に目覚めたのは高校2年のときでした。ある日、母親のレコードを何気なく聴いてみたんです。1960年代に世界的に活躍したテノール、フランコ・コレルリが歌う「O sole mio(私の太陽)」でした。その歌声があまりにも素晴らしく、どうしたらこんな声が出るのだろう?と興味を持ったのがきっかけですね。

趣味はスポーツ観戦、特に野球が大好き。小さい頃から家族全員で「読売ジャイアンツ」を応援していたのですが、あるとき兄弟のひとりが「つまらないから、別々のチームを応援しよう」と提案、それ以来「中日ドラゴンズ」ファンになりました。

大学に入って東京に出てきてからは年に数回、球場に行って観戦しています。オペラと同じで生でみると感動が違います。先日も2列目で観戦したのですが、選手たちの表情までよく見えて大迫力でした。観客が一丸となって同じ贔屓のチームを応援するのもいいのですが、相手選手のプレーが圧巻なら拍手を送る…ジーンときてしまいますね。

体力と集中力が求められるワーグナー。
絶対、手放せないのが「ラムネ」です

ワーグナーのオペラは体力がいります。私も体格はいいほうですが、若い頃ドイツの歌手と共演したときにみんな2mくらいある大柄で、見下ろされる感じ。肺活量もすごくて、歌うと飛沫が遠くまで飛び、それが照明にあたってキラキラ光ってキレイだったな~。なんて、変な話ですみません(笑)。見栄えを気にして大好きなラーメンや炭水化物を抜き、15kg痩せたこともありましたが、ワーグナーを歌うには辛かったですね。

タンホイザー役はこれまで何度か経験していますが、体力だけでなく、ドイツ語の譜面を読むのに脳もフル稼働です。疲れます。そこで見つけた特効薬が「ラムネ」。要はブドウ糖を補給するということなのですが、息子が勉強中に食べているのを見て真似してみたら、これが効いたんです。あまりの名案だったので、周りに勧めまくって、メーカーの回し者かと疑われるほど(笑)。公演に向け、練習中は1幕につき1袋のペースでポリポリ食べて稽古しています。ぜひその成果をご期待ください!

かたよせ じゅんや ・ 島根県出身。国立音楽大学卒業、二期会オペラ研修所修了。近年東京二期会では『パルジファル』題名役、『ナクソス島のアリアドネ』テノール歌手/バッカス、『魔弾の射手』マックス、『サロメ』ヘロデ等、ドイツオペラを中心に数多くの役を演じ、新国立劇場においても『ラインの黄金』『フィデリオ』等に出演。2021年公演でも当役を務める。二期会会員

ヴォルフラム役を演じる バリトン 友清 崇 2024年2月29日(木)、3月3日(日)出演

実は父も声楽家なんですよ。東京二期会での初舞台は1996年、20代前半の学生でした。『魔笛』の合唱で、父はモノスタトス役、早くも初共演を果たしました。

実家が音楽教室をしていますが、子どもの頃、ピアノの練習は大嫌い。中学時代は野球部、少し上の世代に清原や桑田がいて甲子園に憧れていました。

第1希望の野球名門校の受験に失敗し、第2希望の高校に入ると、父から音楽の道への勧めもあって吹奏楽部に入り、クラリネットを吹いていました。コンクールでは全国大会金賞、そこからですね、音楽一直線になったのは。でも大学受験も第1希望の藝大は不合格、第2希望の桐朋へ進学することに。

振り返れば、あらまし2番めにご縁が。
でも結果オーライ“2番めの美学”、物は考えよう

プライベートではうちでテレビを見たり、家族サービスをしたりしていることが多いですね。少し前に見た「古武術」の趣味講座の番組は面白かったですね。体の使い方やバランスの取り方が、歌と共通することが多いんです。武術で思い出しましたが、ジャッキー・チェンに似ているとよく言われますよ(笑)。

妻も声楽家で、2人の子は必要以上に節回ししたりしてカラオケも上手(笑)。上の子はまだ小学生ですが、ワーグナーのオペラの役名を言うと演目がわかります。こんなにワーグナーに詳しい小学生はなかなかいないかもしれません。下の子は、母親と一緒に「夜の女王のアリア」を歌っています。将来は、歌手でなくても、音楽に何らかの関わりがある仕事に就いてくれたら嬉しいですね。

宮本亞門さん演出に2度目の出演となる11月の『午後の曳航』では、齢50にして少年を演じます。また『タンホイザー』のこのプロダクションに出演するのも2度目です。2021年の前回はビーテロルフ役でしたが、今回は憧れのヴォルフラム役です。尊敬する恩師に初めてレッスンを受けたのがアリア「夕星の歌」でした。ですから温故知新の気持ち、そして自分らしい表現で挑みたいと思います。

ともきよ たかし ・ 埼玉県出身。桐朋学園大学卒業、同大学研究科、二期会オペラ研修所、ウィーン国立音楽大学修了。ワーグナー作品での演唱に定評があり、東京春祭 for Kids 子どものためのワーグナー『さまよえるオランダ人』題名役、東京二期会『トリスタンとイゾルデ』クルヴェナール、『ローエングリン』王の伝令、『パルジファル』クリングゾル等、数多く出演。二期会会員