待望の富山・鳥取公演『椿姫』で、指揮を担当するA・ヴェロネージ。
国内外で活躍し、大舞台でマエストロとの共演経験もあるソプラノ大村博美が、その人柄や音楽性を綴ります。
Alberto Veronesi
アルベルト・ヴェロネージ
ミラノ出身。トッレ・デル・ラーゴのプッチーニフェスティバル音楽監督。これまでにバーリ歌劇場音楽監督、シチリア交響楽団音楽監督を歴任。ドイツ・グラモフォン公式アーティストとして、プラシド・ドミンゴ、ロベルト・アラーニャ、アンジェラ・ゲオルギューらと収録。これまでにウィーン国立歌劇場『イル・トロヴァトーレ』はじめ、ベルリン・ドイツ・オペラ、カーネギーホール等、数多く招聘される。東京二期会初登場。
気さくな人柄に感動を覚えた
マエストロとの出会い
マエストロ ヴェロネージとの出会いは2017年9月、ラトヴィア国立歌劇場での『蝶々夫人』でした。私はその時期ちょうど東京二期会『蝶々夫人』公演のリハーサルの最中でしたが、1週間のお休みをいただき、ラトヴィアでの『蝶々夫人』に出演しました。その時の指揮がマエストロ ヴェロネージでした。気さくで飾らない、友達のように接してくれる人柄に嬉しさを感じました。
プッチーニの音楽を熟知する
人気の高い指揮者
プッチーニのオペラでは強弱の表現がとても大切で、ドラマティックにフォルテで歌ったかと思うと次の瞬間にはピアニッシモになったり、感情の起伏によって音量も変化に富んでいます。マエストロは音量の変化にとても細やかな指揮をされました。それまでも多くの指揮者『蝶々夫人』を歌っていた私ですが、ピアニッシモへの思い入れがあれほど深いマエストロはいません。蝶々さんが囁くように語る場面では、ご自分も片手を口の前に当てて囁くようなジェスチャーをし、どういう気持ちや音量で歌って欲しいのかが、舞台上でもよくわかりました。
第2幕が始まりオーケストラピットにマエストロが登場すると、拍手と大歓声がやまないのです。本当にお客様に愛される指揮者だなあと感激したものです。
その翌年、トッレ・デル・ラーゴの「プッチーニフェスティバル」で『蝶々夫人』のオファーを受けました。マエストロはプッチーニフェスティバルの理事でいらしたのです。
イタリア留学時代に観に行った憧れの一流のオペラフェスティバルに、まさか歌いに行く日が来るとは思いませんでした。夢が叶い、18年に出演、19年も『蝶々夫人』、21年には『トスカ』と、3シーズン、プッチーニフェスティバルで主役を務めさせていただきました。
フェスティバルの思い出は大雨。
頼もしい指揮に支えられ大成功
19年のプッチーニフェスティバル『蝶々夫人』の指揮も再びマエストロ ヴェロネージでした。パヴァロッティの再来と言われるステファン・ポップがテノールで、指揮も素晴らしく、スタンディングオベーションでとても良い公演でした。
そのときはイタリアの野外オペラにつきものの豪雨に遭遇してしまいましたが、なんとか開演。大雨のため舞台上の座敷の畳もびしょ濡れで、水溜まりまであります。草履を脱いで座敷に上がったらすぐ足袋がぐっしょり濡れました。それでもマエストロの頼もしい指揮に支えられてのびのび歌う事ができました。
マエストロは、プッチーニフェスティバルはもとより、ヴェルディやフランスオペラでも世界の一流劇場やフェスティバルで観客を沸かせている素晴らしい指揮者です。今回の『椿姫』で、マエストロのイタリア魂が込められた音楽を日本のお客様に聴いていただけるのをとても嬉しく思っています。
大村博美 Hiromi Omura
国際的な活躍を続け、イタリアの名門プッチーニフェスティバルには3年連続主演。蝶々夫人は15ヶ国で絶賛され、オペラ・オーストラリアからDVDが2本発売。2019年宮本亞門演出ワールドプレミエでも演じ、来年7月も主演予定。ロレーヌ国立歌劇場『フィガロの結婚』伯爵夫人、モントリオール歌劇場『オテロ』デズデモナ、ローザンヌ歌劇場『ノルマ』題名役等でも活躍。フランス在住。二期会会員
東京二期会オペラ ヴェルディ作曲 『椿姫』
指揮:アルベルト・ヴェロネージ
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
2024年1月8日(月・祝)14:00 オーバード・ホール 大ホール
2024年1月14日(日)13:00 とりぎん文化会館 梨花ホール