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東京二期会 コンチェルタンテ・シリーズ第5弾R・シュトラウス『平和の日』出演歌手に聞く5つの質問

いよいよ4月に日本初演の『平和の日』が、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールにて上演されます。公演直前の今、中心となる役を演じる4名の歌手に、作品への思いなどを伺いました。

質問

  • 役に共感できるところは? 
  • 日本初演『平和の日』の見どころは?
  • お相手の役柄の印象は?
  • 物語のように、絶体絶命を切り抜たエピソードがあれば教えてください。
  • お客様にメッセージを。

48日(土)出演

〈包囲された街の司令官〉

清水勇磨

Yuma Shimizu

バリトン
Baritone

ⓒ井村重人

街を守る決意や、自分が最後まで踏ん張るしかないという孤独。人間的な感情が苦しい日々を支える糧になっている点です。

時代的背景からしても、非常に考えさせられます。兵士も皆人間、人間同士の尊敬が垣間見える点が見どころだと思います。

マリアとの二重唱に「太陽」という言葉が出てきます。希望を持たせてくれるのはマリアです。最後まで、彼女と一緒に生きたいと願っており、希望や鼓舞をしてくれる大切な人です。

海外でプログラムの印刷ミスで違う曲目が。夕方のコンサートの当日に気付き、一生懸命さらい直して覚えるという…。あんなに集中した事はありませんでしたが、何とか歌い終えました。二度と御免ですが、今となっては笑い話です。

作品は、生きる一瞬一瞬が当たり前ではない事を教えてくれるように思います。人の悩みや葛藤から、本質的な生きる大切さを見つめることができると思います。ご覧いただければ幸いです。

国立音楽大学卒業、同大学院修了。第13回東京音楽コンクール声楽部門第1位等、多数受賞。ローム ミュージック ファンデーション奨学生、 五島記念文化賞オペラ部門新人賞、文化庁在外派遣研修員として渡伊。カルロ・フェリーチェ劇場やボローニャ市立劇場で多くの舞台に出演。東京二期会の当シリーズでは『エドガール』フランクを演じた。二期会会員

〈マリア その妻〉

中村真紀

Maki Nakamura

ソプラノ
Soprano

一途で率直なところに共感します。ドイツ三十年戦争の最後の日が舞台で、名前がある役はマリアただひとり。戦争が“個”を奪い、市井の人の命が軽く扱われる事を表現しているのかなと感じます。

独白から始まるマリアの登場は不安げなメロディーですが、ここがこのオペラの中の希望の始まりでもあり、夫への壮大な愛の告白でもあります。マリアそのもののような音楽を感じていただければと思います。

台本のト書きには、司令官は“美男子”と記されているので、マリアの一目惚れだったのでは。この司令官、本来は、とても魅力的な男性なのだと思います。

ヴェネツィアで橋から水面を眺めている時、下に落ちて沈み、間一髪で二人のゴンドリエーレに救助してもらった経験が。その週だけで 同じ場所で7人が溺死したと後から聞き、恐ろしくなりました。

役に挑戦できる事がとても嬉しいです。複雑な音の交わりを面白く聴いていただければ幸いです。

東京音楽大学卒業、同研究生オペラコース修了。ハンガリー国立リスト音楽院で学び、ブダペスト春のフェスティバル出演。新国立劇場オペラ研修所修了。文化庁新進芸術家海外研修 にて渡伊。第12回レオンカヴァッロ国際オペラコンクール第3位、聴衆者賞。多くのオペラに出演。『ローエングリン』オルトルートで二期会デビュー。二期会会員

49日(日)出演

〈包囲された街の司令官〉

小森輝彦

Teruhiko Komori

バリトン
Baritone

皇帝に忠実な姿は、日本の武士を彷彿させ、そのひたむきさに心を打たれます。反面それが過ぎて平和の到来を信じられない、そうした「浮く」事が必要なので、音楽を良く読み作戦を練りたいと思います。

薫陶を受けたレジェンド、ハンス・ホッター先生が世界初演した役を、日本初演でしっかりと歌わせていただきます。

マリアの司令官へのまっすぐな愛。音楽的な強さは、この信念の強さと比例しているようです。妻を深く愛しながら恐妻家要素のあった作曲家の性格も表出しているのでは。

皇帝が司令官にこだわりを持たせた理由を知りたいです。司令官の思い込みで、どんでん返しが演出されたのですから。

和平が成立し司令官同士が「なぜ我々は戦っていたのか?」とユニゾンで歌い、最後にハ長調で友愛を称えて華やかに終わる。ここに願いを込めることで、我々舞台に立つもの、お集りくださる皆さんの平和賛歌になったら、と願います。

東京藝術大学卒業、同大学院及び文化庁オペラ研修所修了。文化庁在外研修員として渡独。アルテンブルク・ゲラ市立劇場専属第一バリトンを12年務め、邦人初のドイツ宮廷歌手。ザルツブルク音楽祭やミラノ・トリノ音楽祭等、欧州各地にて70以上の役で出演。近年東京二期会では『ファルスタッフ』フォード、『ルル』シェーン博士等を演じる。二期会会員

〈マリア その妻〉

渡邊仁美

Hitomi Watanabe

ソプラノ
Soprano

“マリア”で思い浮かぶのは聖母マリア。マリアの音楽は神がかり、時にねじ伏せるような強い力を感じさせ、畏怖の念を覚えます。愛する人を失うなら自分も一緒に…という気持ちには共感します。

三十年戦争の終戦の年が舞台なので、若い登場人物は「平和な時代」を知らず戦争時代を生きています。この時期の日本初演は奇遇ですが、作曲家の色彩豊かな音楽に平和への願いを込め、癒しとなれば幸いです。

性格的には、マリアよりも司令官の方が憧れるかも…。誓いや信条を貫き最後まで戦う姿は少年漫画の主役のようで、魅力的。実際、夫なら頑固で大変そうですが…。

以前、マンションで深夜にガス爆発が起きて、「終わった」と思いましたが、奇跡的に無事でした。このピンチによって家族の絆も深まったように思います。

恋い焦がれるR.シュトラウス作品の日本初演に出演できて光栄です。魅力を存分にお伝えできますよう、誠実に演奏したいと思います。

東京藝術大学卒業(安宅賞)、同大学院及び二期会オペラ研修所修了(奨励賞、優秀賞)。 モーツァルテウム音楽大学リート・オラトリオ科修了。東京二期会には『アルチーナ』題名役でデビュー。『蝶々夫人』『サロメ』『ルル』各題名役のカヴァーキャストも務め、中止となった『影のない女』では皇后での主演が予定されていた。二期会会員

東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ

R.シュトラウス 『平和の日』

オペラ全1幕 日本語字幕付原語(ドイツ語)上演
指揮:準・メルクル
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
Bunkamuraオーチャードホール
2023年4月8日(土)17:00、9日(日)14:00

2022年東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ『エドガール』ⓒ堀衛

新しいオペラのスタイル
「コンチェルタンテ・シリーズ」

オーケストラを取り囲むように設置されたステージで映像と照明を駆使し、ドラマへの理解を深めながら楽曲の魅力を存分に伝える“新しいオペラ”として高い評価を得ている〈東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ〉。第5弾はドイツオペラのスペシャリスト、準・メルクルの指揮による、リヒャルト・シュトラウスのオペラ『平和の日』をお届けいたします。