TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

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オペラを楽しむ

女性目線で語り尽す

『タンホイザー』の女たち男たち

ふたりの対照的な女性を演じる歌手4人に、役柄への思いや意気込みについて聞いた。

エリーザベト役

田崎 尚美

Naomi Tasaki

ソプラノSoprano

Profile

東京藝術大学卒業(アカンサス音楽賞、同声会賞)、同大学院修了。『パルジファル』クンドリで二期会デビュー、豊かな表現と美しさを携えた声で存在感を示し、『ナクソス島のアリアドネ』『サロメ』各題名役で出演。びわ湖ホール『ワルキューレ』ジークリンデ、日生劇場『ルサルカ』及びグランドオペラ共同制作『トゥーランドット』各題名役も好評を得る。二期会会員

Message

●作品の魅力について とにもかくにも序曲が好きです。オペラ全ての要素がそこに詰まっていると言っても過言ではないです。全てのクラシック曲の中で、私的ランキングNo.1ですね。

●エリーザベト役について 育ちが良く気高い魂を持っている人物だと思っています。絶対に姿勢が良い女性だと思うので、立ち姿や背筋の伸びを意識したいです。歌のこだわりじゃなくてごめんなさい(笑)。

●エリーザベトとヴェーヌス、どちらがお好き? 発想がヴェーヌス寄りなので、お友達はエリーザベトみたいな子が良いかもしれません。

●タンホイザーとヴォルフラム、どちらがお好き? タンホイザーはとんでもない人だけど、みんなから許される特別な何かを持っている印象。ヴォルフラムは良い人過ぎて見ているのが辛くなります。楽しく遊ぶならタンホイザー、旦那にするならヴォルフラムでしょうね。きっとみんなそうでしょう?

●読者の皆様へ 2020年は世界的に大変な年になってしまいましたが、そんな中でも私は『タンホイザー』の序曲だけは聴くようにして過ごしておりました。私の大好きな作品の魅力を皆さんにお伝えできるよう、稽古に励む所存です。ご来場をお待ちしております!

エリーザベト役

竹多 倫子

Michiko Takeda

ソプラノSoprano

©武藤 章

Profile

愛知県立芸術大学卒業。東京藝術大学大学院修了。日本音楽コンクール声楽部門(オペラアリア)第1 位。オルヴィエート国際声楽コンクール優勝。 文化庁新進芸術家海外研修制度及び五島記念文化賞オペラ部門新人賞により渡伊、マンチネッリ歌劇場『蝶々夫人』題名役でイタリアでのオペラデビュー。近年国内では日生劇場『ルサルカ』題名役を演じた。二期会会員

Message

●作品の魅力について エリーザベトの「歌の殿堂のアリア」は、コンクールやオーディションでも歌ってきた大切な曲です。また彼女の最後のアリアの旋律は初めて聴いた時に心が掴まれるような気持になったことを今でも覚えています。神聖なあたたかい響きに心から感動します。

●エリーザベト役について エリーザベト役はずっと全幕で演じたかった念願の役です。さらにこの役で二期会デビューをさせていただけるということ、素晴らしい共演者の皆様とご一緒できることに、大きな喜びと感謝の気持ちでいっぱいです。

●エリーザベトとヴェーヌス、どちらがお好き? エリーザベトが友達だと成長できそうです。ただ、命を絶つのだけはダメだよって伝え続けたい。ヴェーヌスは近づき難いほど魅力的な女性ですね。

●タンホイザーとヴォルフラム、どちらがお好き? 旦那にするならやはりヴォルフラムでしょうか。タンホイザーは友達になったらすごく楽しそう。私はゴレンジャーで言うと、アカレンジャーではなく他の色のレンジャーに惹かれるタイプなので(笑)。

●読者の皆様へ 『タンホイザー』の壮大で圧倒されるような音楽と、“愛”をテーマにしたこの素晴らしい物語をぜひ観にいらしてください!

ヴェーヌス役

板波 利加

Rika Itanami

ソプラノSoprano

Profile

東京藝術大学卒業後、渡伊。パルマ市トスカニーニ財団『ナブッコ』でオペラデビュー後、23年に渡り欧州で様々な作品に主演、「声量、表現力、響き、気質、技術のどれもが強烈なインパクトを持つ日本人歌手」と絶賛される。近年東京二期会では『マクベス』マクベス夫人、『エロディアード』題名役を演じ、『サムソンとデリラ』題名役でも出演予定。二期会会員

Message

●作品の魅力について 浮ついている男性と実直で誠実な男性、官能の女性と清楚な女性、神の世界と人間の世界など様々な“対照”を露わに表現したワーグナーの音楽は、舞台の視覚も加わってそれぞれが思い描くそれらのイメージを強烈に認識させるのではないでしょうか。

●ヴェーヌス役について ヴェーヌスの旋律を歌っていて官能の女神である彼女の愛には母性を全く感じません。「さすがだな」と思います(笑)。

●エリーザベトとヴェーヌス、どちらがお好き? 何をするにも話が早そうなので、ヴェーヌスです。

●タンホイザーとヴォルフラム、どちらがお好き? ヴェーヌスとして、真面目で誠実なヴォルフラムをヴェーヌスベルクにお迎えしたいですね!

●読者の皆様へ 二期会50周年記念公演『カルメン』題名役でデビューし、60周年記念公演『ナブッコ』アビガイッレ、そして今回70周年記念公演『タンホイザー』に出演させていただきます。フランス、イタリア、ドイツの華々しいオペラ作品を10周年ごとに歌わせていただいていることに幸せに感じています。そして今、このコロナ禍を超えてオペラを愛し続ける全ての方々に心から感謝いたします!

ヴェーヌス役

池田 香織

Kaori Ikeda

メゾソプラノMezzosoprano

Profile

慶應義塾大学法学部卒業、二期会オペラスタジオ修了。新国立劇場「ニーベルングの指環」出演や、びわ湖ホール「ニーベルングの指環」ブリュンヒルデを邦人初の3 作で演じるなど、ワーグナー作品に不可欠な存在と評価される。東京二期会『トリスタンとイゾルデ』題名役が喝采を浴び、その後も様々なオペラに出演、『サムソンとデリラ』題名役も予定される。二期会会員

Message

●作品の魅力について 序曲が好きです。ワクワクします!

●ヴェーヌス役について ワーグナー作品の女性役を勝手に“白い役”と“黒または赤い役”に分けているのですが、ヴェーヌスは真紅ですね。女性の中の女性性を煮詰めてエキスにしたみたいな人です。

●エリーザベトとヴェーヌス、どちらがお好き? エリーザベトは典型的な“白い役”。このふたりをひとりの歌手が演じることもあるので、「私も挑戦してみたいなあ」と密かに思っていますが、どちらも女性の中にあるものを取り出して純化させたような役だと思います。ヴェーヌスは同性のお友達は少なそうですね(笑)。

●タンホイザーとヴォルフラム、どちらがお好き? ヴォルフラムは素敵だけど、身近にいたらちょっとイラッとするかもしれませんね。タンホイザーのほうが、色々はっきりしていて付き合いやすいかも!

●読者の皆様へ ゲーム音楽とか映画音楽とか、最近はオーケストラが演奏するババンとかっこいい音楽がたくさんあるじゃないですか。ああいうのがお好きな方は、どうぞ怖がらないで試しに観にいらしてください。字幕もあるので話も分かるし、途中ちょっとうとうとしちゃっても全然大丈夫です。ぜひ生で体験して欲しいなあと思います。

人物相関図

構成:田中庸子

ワーグナー 『タンホイザー』

オペラ全3幕 日本語字幕付原語(ドイツ語)上演
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ 原演出:キース・ウォーナー
演出補:ドロテア・キルシュバウム
合唱:二期会合唱団  管弦楽:読売日本交響楽団
東京文化会館 大ホール
2021年2月17日(水)17:00
18日(木)14:00
20日(土)14:00
21日(日)14:00