TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

ENGLISH

オペラを楽しむ

ニューヨークの摩天楼を思いながら過ごす 至福の時間 高田正人

 「趣味はお酒と外食、読書で、なかでも優先順位が高いのはお酒と外食です。皆で集まるのが好きなので、しょっちゅう食べに行ったり飲みに行ったりしていますね。年間350日は外食です。皆でよく行くのはイタリアンですが、一人で飲みに行くのも好きです。これからご案内する「ニューヨーク バー」は、二期会の稽古帰りにフラッと寄ることが多いですね」
 ニューヨーク バーが位置するのはパーク ハイアット 東京の52階だが、ロビーから52階への直通エレベーターはなく、41階で乗り継ぐ必要がある。41階でエレベーターを下り、レストラン ジランドールの前の長い廊下を通って突き当たりを左に折れると、今度は廊下の両側に本棚を配したライブラリーが現れる。「この空間の独特の雰囲気も好きなんです。僕はもともと本屋や図書館の紙の匂いが好きなんですが、ここはお洒落な図書館みたいで、日常から離れていく感じがして。“本の森”みたいでしょう?」
 楽しげな口調で案内しながら、高田さんは足取りも軽やかに奥のエレベーターホールへと向かう。乗り換えたエレベーターの扉が52階で開くと、そこは大きな窓に大都会の夜景が広がるニューヨーク バーだ。
 「初めてここに来た時、空気感がNYみたいだなーって思ったんです。外国人も多いですしね。それから時々来るようになりまして。ジャズの生演奏が楽しめるのもいいんです」
 ニューヨーク バーでは、平日は20時以降(日曜日は19時以降)、ジャズバンドの生演奏が行われている。
 「リラックスしたい時はジャズですね。オペラを聴くと仕事モードになってしまうので(笑)。NYに留学していた頃は、オペラに次いでジャズをよく聴きに行きました。当時も週末はよく飲みに行っていて、蒸溜酒を飲むことが多かったですね。今でもよく飲むのは“メーカーズマーク”です。これは安くて美味しい(笑)。樽の香りがするバーボンが好きなので、“オールド・フィッツジェラルド”も好きです」
 “オールド・フィッツジェラルド”は、あるバーで隣の人が注文していて、名前が小説家のフィッツジェラルドと同じだったことから興味を持ち、飲んでみたのだとか。いかにも読書好きの高田さんらしいエピソードだ。
 「でも、蒸溜酒を飲むと高い音が出にくくなるような気がするので、本番前は控えて、ビールなどの軽いものにしています。カクテルを飲むとしたら定番のギムレットが多いですね。あと、ビールにテキーラを混ぜた“デスペラード”。言葉の響きも含めて好きですね。女性にお勧めなのは、ヴェネツィア生まれのシャンパンカクテル“ベリーニ”です。作曲家のベッリーニ(Bellini)と同じ綴りなのがオペラっぽいかと。カクテルの楽しみの半分は色にあると思うので、女性にはこういうきれいな色のカクテルをお薦めしたいですね」
 ニューヨーク バーといえば、NYをテーマにしたオリジナルカクテルも有名だ。高田さんが2011年夏からメンバーとして参加している「ザ・ジェイド」のキャッチコピーは、「マンハッタンの風」。NYが似合う高田さんが、女性にお薦めのNYらしいカクテルを教えてほしいと言われたら?
 「やはりコスモポリタンですね。人気ドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』にもよく登場した、NYらしいカクテルの代表だと思います」
 声楽家は一般的にお酒にストイック。本番一週間前から控える人も少なくないが、高田さんは「禁じることが多いと閉じて行くので、枷がない状態で気持ちよく過ごすことのほうがいいと思うんです」という。伸びやかな美声は、伸びやかな精神に宿るのだろう。今後の公演は5月1・2日の銀座オペラ『蝶々夫人』 (ヤマハホール)、10月二期会『ダナエの愛』(日本舞台初演)、こちらも楽しみにしたい。

パーク ハイアット 東京 ニューヨーク バー

ニューヨークの摩天楼を思わせる大都会の夜景を一望に臨み、ジャズバンドのライブ演奏を聴きながら、大人の時間を満喫できる。ニューヨークをテーマにしたオリジナルカクテルや、さまざまな銘酒とともに、上質なひとときと空間を演出する。

〒163-1055 東京都新宿区西新宿3-7-1-2-52F 
03-5323-3458 tokyo.park.hyatt.jp
営業時間:17:00~24:00(木・金・土曜~25:00)

高田正人(たかだ まさと) テノール

栃木県出身。東京芸術大学声楽科卒業。同大学院修了。01年国際ロータリー財団奨学生、02年イタリア政府給費奨学生として、G.ニコリーニ国立音楽院に留学、M.グロッピ女史、F.ダルテーニャ氏に師事。09年より文化庁新進芸術家海外留学研修員としてNYにて研鑽を積む。ミラノ、ヴェローナ、NY、台湾等でコンサートに出演。二期会オペラには07年から出演、13年『こうもり』アルフレード、13年『リア』コーンウォール侯、14年『チャールダーシュの女王』ボニ等、華のある演技で注目される。The JADEメンバー。二期会会員。
公式ブログ yaplog.jp/dachin55/

2010 年ニューヨークに留学して半年の頃。「世界はたくさんのチャンスに満ちていて、人生は何歳になってもひっくり返すことのできるもの」ということを教えてくれた街。