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『トゥーランドット』の指揮者 ディエゴ・マテウスさんの躍動 次世代を担うアーティストとして最も注目を浴びているマエストロのひとり、ディエゴ・マテウスさん。ベネズエラ「エル・システマ」の出身で、東京二期会初登場となるマエストロのヴィジョンを探ります。

「“I love you so much!” 来年2月、東京文化会館で私の音楽や情熱を皆さんと共有できるのが今から待ちきれません」とディエゴ・マテウスさん。指揮者になったきっかけや故郷ベネズエラについては「幼少期はごく普通の子どもでした。近所の子たちと(ベネズエラでは盛んな)野球をしたり、放課後に音楽教室に行ったり。音楽への好奇心、素晴らしい指揮者たちとの出会いが、今の仕事に通じています。指揮者はさまざまな国、文化、楽団を訪ね行く素敵な仕事ですから、年を重ねてもずっと続けたいと思っています。ベネズエラはとても美しい国ですが、今は年に2度ほどしか帰れず、寂しいですね。『エル・システマ』時代には、親友や長い付き合いとなる友人に巡り会い、音楽以外でも共にいろいろなことに取り組みました。かけがえのない時間です」と語ります。
 来日も多く、名だたるオーケストラの指揮をしているマテウスさん。「マエストロ小澤に招いていただいたのは本当に幸運でした。日本のオーケストラもプログラムもレベルが高いと思います。また、クラシックが生まれた国に対するお客様のリスペクトや、曲への集中力、作品への向き合い方なども感銘を受けます」。
 来日前の1月には、 ベルリン・ドイツ・オペラでの『蝶々夫人』も予定され、まさにプッチーニ尽くしの2023年になるそう。「3作続くので今はプッチーニに専心、と言えるかもしれません。『トゥーランドット』は大傑作ですから、指揮者冥利に尽きます」。

2022年9月パリ・オペラ座に『チェネレントラ』でデビューしたときのプログラム。

ベネズエラの教育システム「エル・システマ」のスターのひとり

 ディエゴ・マテウスも学んだ「エル・システマ」は、世界的に“ベネズエラの音楽の奇跡”として知られ、子どもや若者たちが音楽教育を無償で受けられる育成の場。1975年、ホセ・アントニオ・アブレウ博士によって創設され、現在では、シモン・ボリバル音楽財団に属し、60万人の子供たちが参加する大プロジェクトに。
 「エル・システマ」のオーケストラ、合唱団などの子どもたちは、仲間という大きな「家族」に属することで自分の存在を再認識し、そこで将来プロの音楽家の夢を実現したり、社会性を身に着けます。ディエゴ・マテウスのほか、グスターボ・ドゥダメルやクリスティアン・バスケスなどの世界的指揮者や、ベルリン・フィルをはじめ、世界中の名門オーケストラで活躍するメンバーを輩出していることでも有名。

「エル・システマ」から生まれたシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ。

自然美しき南米の国 ベネズエラ・ボリバル共和国

ベネズエラ・ボリバル共和国は南米に位置する国。一説にはかつてこの地を訪れたスペイン人が、マラカイボ湖という湖で水上生活する先住民を見て「小さなヴェネツィア」と呼んだことが国名の由来となっています。ギアナ高地のテーブルマウンテン「ロライマ山」(下写真)など、壮大な自然にあふれ、日本ではカカオの生産地としても知られ、埋蔵量世界最大とも言われる原油産油国でもあります。

資料協力: 駐日ベネズエラ・ボリバル共和国大使館

2022年「小澤征爾音楽塾」で初めての首席指揮者に就任

©Shintaro Shiratori

 「『クラウディオ、君が信頼する若い優秀な指揮者はいるかい、いい人がいたら教えてくれないか?』ディエゴ・マテウスの名前を初めて聞いたのは、長年信頼してきた指揮者で盟友のクラウディオ・アバドからの僕への返答の中で、だった。会ってみるとディエゴがなぜクラウディオにそれほど信頼されているかわかった。
―表裏のない真っ直ぐな性格、音楽にかける情熱、より良い音楽のためなら、自分の時間、エネルギーを惜しみなく使う、その姿勢。その気質に、僕自身も共感し、何度もサイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)との演奏会にも呼んでいる。
(中略)
 ディエゴ・マテウスがこれから塾オケを指導指揮してくれることは僕の大きな喜びだ」。
(小澤征爾塾長から歓迎のメッセージより抜粋)
引用元:小澤征爾音楽塾ozawa-musicacademy.com

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトで2023年3月『ラ・ボエーム』を指揮

小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトXIX
G.プッチーニ:歌劇『ラ・ボエーム』
オペラ全4幕 新制作〈原語(イタリア語)上演/字幕付〉 
音楽監督:小澤征爾 指揮:ディエゴ・マテウス 演出:デイヴィッド・ニース 管弦楽:小澤征爾音楽塾オーケストラ 合唱:小澤征爾音楽塾合唱団、京都市少年合唱団
京都公演:2023年3月17日(金)、19日(日)ロームシアター京都 メインホール/東京公演:3月23日(木)東京文化会館 大ホール/愛知公演:3月26日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
お問い合わせは、ヴェローザ・ジャパンTEL.03-6411-5445まで

ディエゴ・マテウス Diego Matheuz

クラウディオ・アバドの薫陶を受け、国際的なキャリアを築く。『グラモフォン』誌で「明日のアイコン」として紹介される。フェニーチェ劇場首席指揮者、オーケストラ・モーツァルト及びメルボルン交響楽団各首席客演指揮者を歴任。日本ではN響やセイジ・オザワ松本フェスティバル、ドイツ・グラモフォン120周年記念スペシャル・ガラ・コンサート等に登場。2022年から小澤征爾音楽塾首席指揮者に就任。ミラノ・スカラ座管弦楽団、フランス国立放送交響楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団等、名門に数多く客演し、ベルリン州立歌劇場、リセウ大劇場、トリノ王立歌劇場、アン・デア・ウィーン劇場等に登場。メトロポリタン歌劇場には2023年『カルメン』でデビュー予定。東京二期会初登場。

ジュネーヴ大劇場との共同制作
プッチーニ 『トゥーランドット』

(ルチアーノ・ベリオによる第3幕補作版)
オペラ全3幕 日本語字幕付原語(イタリア語)上演
指揮:ディエゴ・マテウス 演出:ダニエル・クレーマー
セノグラフィー、デジタル&ライトアート:チームラボ
合唱:二期会合唱団
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
東京文化会館 大ホール

2023年2月 23日(木・祝)18:00、24日(金)14:00、25日(土)14:00、
26日(日)14:00