舞台中央の空中に無数の光線が重なり合あって生まれる立体的な“光の彫刻”。不思議な視覚効果に観客は目を奪われる。
ⓒ Magali Dougados, Courtesy Daniel Kramer, Grand Théâtre de Genève, and Pace Gallery
今年6月、ジュネーヴ大劇場でのワールドプレミエで大喝采を浴びた、
新制作『トゥーランドット』。
セノグラフィーを手がけたのは国際的アート集団「チームラボ」です。
東京・豊洲の「チームラボプラネッツ TOKYO DMM.com」は、
水に入るミュージアムと花と一体化する庭園。©チームラボ
猪子寿之さんは2001 年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にアート集団、チームラボ創業。チームラボは、アーティスト、プログラマ、エンジニア、CG アニメーター、数学者、建築家など、様々な分野のスペシャリストから構成され、その幅広い活動は国内外で高く評価されている。作品は世界中の美術館に収蔵されているほか、東京・豊洲には没入型のアート空間「チームラボプラネッツ」 がある。
『トゥーランドット』を現場で担当したアートディレクター、アダム・ブースさんに聞く
今回、ジュネーヴ大劇場で現場作業に携わったのはチームラボの7人のメンバー。現場で指揮を執ったアートディレクターのアダム・ブースさんに、初めて手がけたオペラのセノグラフィーについて、またワールドプレミエの様子、手ごたえなどをうかがいました。
──初となるオペラのセノグラフィーはどのように出来上がっていったのでしょうか?
正直なところ、私にとってオペラは身近とは言えませんでしたから、宮本亞門さん演出の『金閣寺』などを見て勉強させてもらいました。演出のダニエル(・クレーマー)は、『トゥーランドット』を女性優位のディストピア(反理想郷)における、ゲームショーのように描こうとしていました。司会者とクイズの解答者が向き合い、それを観客が眺めるテレビ番組『クイズ・ミリオネア』がイメージです。ダニエルの要望はただ一言「白」と抽象的なこともありましたが、イメージをふくらませるのは私たちの得意分野です。
──具体的にはどのような構成ですか?
舞台は回転する2つの側面で構成されています。ゲームショーの場面では、トゥーランドットの謎かけに挑戦する男たちを、女たちが宙に浮いた白い箱から鑑賞します。舞台装置はミニマルに抑え、レーザーによる面を組み合わせて光の彫刻空間を作り上げました。回転するとLEDと鏡を敷き詰めた巨大な三角形の装置が現れます。空間に映像が反射し万華鏡のような効果を生み出すことで、苦悩するカラフの潜在意識を表現しました。
──チームラボといえば没入的なアート体験。今回も観客は没入感に浸れるのでしょうか?
はい。観客がスタジオでゲームショーを見ている感覚を味わえるように、舞台をはみ出して光の空間が作り出されます。
──初めての試みで難しかったことは?
レーザーを映し出すスモークのコントロールや、照明との兼ね合いなどでしょうか。レーザーでのセノグラフィーに不安がなかったとは言えませんが、心配していたら思い切った作品はできません。ダニエルも新しいものを取り入れることに積極的です。チームラボも伝統を大切にし、それを新しいデジタル手法で表現するということをしてきました。日本での公演を楽しみにしていてください。
潜在意識を表す、3つの空間に区切られた三角形の装置。鏡に反射した映像がゆっくりと動く様子はまるで万華鏡のよう。
ⓒ Magali Dougados, Courtesy Daniel Kramer,Grand Théâtre de Genève, and Pace Gallery
アダムさんが見どころのひとつとしてあげた、3人の大臣、ピン・パン・ポンの場面。奇異な外見とコミカルな演技、そして歌声が強い印象を残す。
ジュネーヴ大劇場との共同制作
プッチーニ 『トゥーランドット』
(ルチアーノ・ベリオによる第3幕補作版)
オペラ全3幕 日本語字幕付原語(イタリア語)上演
指揮:ディエゴ・マテウス
演出:ダニエル・クレーマー
セノグラフィー、デジタル&ライトアート:チームラボ
ステージデザイン:チームラボアーキテクツ
合唱:二期会合唱団
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団
東京文化会館 大ホール
2023年2月 | 23日(木・祝)18:00、24日(金)14:00 25日(土)14:00、26日(日)14:00 |