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オペラを楽しむ

二期会70周年特別企画〈第3回〉タレント 山田邦子さん×テノール 樋口達哉 スペシャル対談 舞台を楽しみ、観客を喜ばせる表現者としての想い

樋口達哉の歌に聴き惚れ、オペラにのめりこんだ山田邦子さん。
10年以上にわたり交流を深め、演者としてお互いに刺激し合う
仲のよいお二人が、楽しいオペラトークを繰り広げました。

山田 樋口くんの生歌を初めて聴いたのは、『トゥーランドット』の「誰も寝てはならぬ」で、衝撃でした。福島の青年が世界へ羽ばたき、トップのテノールに。声楽を始めたのも遅かったのに、すごいよね。日本でも才能を持った人材がまだまだ埋もれているのではと思いますよね。

樋口 音楽をやりたいというよりも、東京への憧れが強かったです。人間の体の中でもっとも成長が遅いのが声帯ということで、当時の音楽の先生に30歳過ぎまで待てるのか?と。音楽で唯一可能性のある道でした。一旗揚げたい、なにかつかんでやるという想いでイタリアに。

山田 デビューは『ラ・ボエーム』の貧乏詩人でしょ。その後、同役を演じると、当時は未熟だったなと感じたりもするの?

樋口 それこそ、自分の昔の録音を聴く機会があったのですが、とってもいい声なんですよ(笑)。今のテクニックがあれば、もっとすごかっただろうなと思います。若いピチピチした声には敵わないけれど、年齢を重ね、キャリアも積んで、味わいが増すというのかな。80歳のドミンゴのように、自分でしか表現できないものを目指していきたいですね。

山田 6月に開催した「樋口達哉のオペラ『道化師』」は、まさに円熟した色気があってしびれましたよ。

樋口 常に新しい自分を表したい。よく今までで印象に残ったものはと聞かれますが、これからの樋口を観てくださいと答えます。邦子さんとの共演は、表現者として、新鮮な驚きがいっぱいです。

山田 私の40周年記念で、ゲストとして出ていただいた「浅草 東洋館」とかね。

樋口 多業種の方との交流やさまざまな経験は、芸の肥やしとして舞台上で必ず生きてくる。見習うべきことも多く、刺激的です。ダメ出しもされますけどね。

山田 ディナーショーで、二人で社交ダンスをやろうとしたけれど、この人、全然ダメで(笑)。病院でのチャリティーでは、ひどい音響の中で歌わせたり。無茶な誘いばかりで、怒ってない?

樋口 邦子さんと接して、クラシックのあり方をあらためて考えるようになりました。先ほど才能が埋もれているという話もありましたが、オペラやクラシック音楽を知る入り口として、子どもたちに本物の歌を聴いてもらう機会を広く作っていくことも使命だと感じます。

山田 多くの人にオペラが身近な存在だと思ってほしい気持ちもある一方で、ちゃんとお洒落してワクワク出かける特別感も大事だと思うのよね。樋口達哉は雲の上の人であってほしいの。これ私服でしょ? 舞台だけでなく、いつも華やかでエレガンスよね。

樋口 見られている意識を持って、お洒落でいようとね。オペラ=フォーマルのイメージを払拭したい気持ちも。でもチャラいと思われることも(笑)。

山田 正装したとき、たまらなくかっこいいわよ。一生懸命、追いかけていくわ。

樋口 ね、結局、そこに落ち着くんですよ。いつも燕尾服着ようかなあ(笑)。来年2月には『トゥーランドット』です。プッチーニの遺作で、実は未完の作品なんですよ。上演するのは新バージョンで、皆さんが知っている終わり方とは少し違う点も見どころです。楽しみにしてください。

山田邦子(Kuniko Yamada)

1960年、東京都出身。全日本有線放送大賞新人賞、ゴールデンアロー賞受賞。『オレたちひょうきん族』などでお茶の間の人気者に。TV・ラジオのほか、がん撲滅を目指すチャリティー団「スター混声合唱団」、YouTube「クニチャンネル」など多彩に活動。アスリート・マーケティング所属。

樋口達哉(Tatsuya Higuchi)

武蔵野音楽大学大学院修了後、渡伊。カルーソー国際声楽コンクール最優秀賞。ハンガリー国立歌劇場『ラ・ボエーム』で欧州デビュー後、ミラノ・スカラ座管弦楽団、メトロポリタン歌劇場管弦楽団などと共演。数々のオペラ主演で、輝く声と華をもつ歌手として聴衆を魅了。2月東京二期会『トゥーランドット』カラフで出演予定。二期会会員