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オペラを楽しむ

世界に羽ばたいた二期会のオペラ 清水脩作曲『聟選び』(1968年)

(写真上)2002年のベルギー王立歌劇場(モネ劇場)提携公演『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(指揮:クラウス・ペーター・フロール、演出:クルト・ホレス)の壮大なフィナーレ。 ©鍔山英次  (下)2003年ケルン市立歌劇場との共同制作『ばらの騎士』(指揮:エマニュエル・ヴィヨーム、演出:ギュンター・クレーマー)の終幕の三重唱。竹林を想起させる舞台装置が印象的。 ©竹原伸治

 オペラという華やかな世界の裏で創立以来、順風満帆に見えた二期会ですが、ヨーロッパ発祥のオペラに対し、日本のオペラの完成度向上や、財政面の問題などには常に直面してきました。そうした難しい問題を乗り越えるための活動のひとつが、海外のオペラ劇場との共同制作でした。
 2002年の『ニュルンベルクのマイスタージンガー』は、二期会創立50周年を迎えたハイライトともいうべき演目でしたが、単独で取り組むにはあまりにも大規模でリスクと背中合わせでした。そこで文化庁の協力も得て、共同制作という形で上演に至りました。相手先は衣裳や装置が〝ドイツ過ぎ〟ず、演出もユニバーサルなベルギー王立歌劇場(モネ劇場)で、劇場スタッフを巻き込んでの協働公演でした。こうして初めての国際共同制作をスタートすることとなったのです。長大な本作品は、よこすか芸術劇場で舞台リハーサルを重ね、初演を迎えました。その後、東京文化会館で4回の公演を行い、邦人キャストで上演という大きな企画を計5回行うことができました。

 この公演の大成功をきっかけに、二期会からドイツのケルン市立歌劇場にオファーし、共同でゼロから作り上げたのが翌2003年の『ばらの騎士』です。演出を担当したギュンター・クレーマーが来日時、桂離宮を見学した際の感銘や、ジャポニスムにインスピレーションを得て考えられた舞台は個性あふれるものでした。こちらは日本公演に先駆けた2002年、ケルン市立歌劇場でプレミエ、現地で絶賛を博した舞台を1年という短いタイムラグで日本の聴衆に披露。東京で4回公演の後、関西二期会でも2回の上演を行うというプロダクションとなり、すべてが日本人キャストによる初の原語上演となった『ばらの騎士』公演は大変な成功を収めました。

 以来、2004年のベルリン・コーミッシェ・オーパーとの『イェヌーファ』、2005年のハノーファー州立歌劇場との『さまよえるオランダ人』、2006年のハンブルク州立歌劇場との『皇帝ティトの慈悲』など次々と共同制作が行われていったのです。