第1幕
イケメン王子タミーノが登場

イラスト：小迎裕美子

　舞台は古代エジプトの架空の世界。異国の王子タミーノが岩山で大蛇に襲われ失神。夜の女王に仕える3人の侍女が大蛇を退治する。そこにたまたま通りかかった鳥刺しのパパゲーノは自分が救出したと嘘をついたため、侍女から口に錠前を掛けられてしまう。そして侍女達はタミーノに、さらわれた夜の女王の美しい娘、パミーナの肖像画を見せ、救出を懇願する。

第1幕
パパゲーノをおともにパミーナを救出！

　夜の女王が登場し、悪人ザラストロから娘を救出してくれれば、王子に娘を与える、と。かくして王子は「魔法の笛」を、なりゆきで同行することになったパパゲーノは「魔法の鈴」を受け旅へ。道中、魔法の笛と鈴で危機も脱出。実はザラストロは高僧で、パミーナが邪悪な夜の女王の餌食にならぬよう保護していたことが判明する。

第2幕
必聴！夜の女王の復讐のアリア

　王子タミーノはパミーナと出会いお互い惹かれ合うが、彼女を妻に迎えるための試練としてザラストロに「沈黙の試練」を課される。一方、夜の女王はパミーナにザラストロの殺害を命じ、殺さなければ親子の縁を切ると歌う。また、パパゲーノは若き娘パパゲーナと出会い、同じく試練が与えられるが、こらえ性の無さから挫折、パパゲーナと切り離されてしまう。パミーナは沈黙する王子に捨てられたと思いこみ、自殺を図る。

第2幕
フィナーレは、めでたく二組のカップルが誕生

　自殺を試みるパミーナを童子が阻止。タミーノはパミーナと再会し、話すことが許される。その後二人は火と水の試練に直面するが「魔法の笛」の力で克服。他方パパゲーナを失ったパパゲーノも自殺を図るがまたしても童子から「魔法の鈴」の魔力を教えてもらい、二人は結ばれることに。二組のカップル誕生の一方で、夜の女王は怒り心頭。ザラストロ領に侵入するが結局地獄に落ちる。場面は明るい世界に転じ、皆が神に感謝し、壮麗なフィナーレを迎える。

亞門版『魔笛』はここが面白い

2013年オーストリア、リンツ州立劇場で初演。大成功を収めた亞門版『魔笛』の待望の再演です。王子タミーノは、リストラされ絶望するサラリーマンに置き換えられ、コンピュータゲームをする子ども達がいる家庭のリビングで物語が始まる冒頭のシーンから度肝を抜かれます。現代的で、社会問題をモーツァルトの作品に反映させ、迫力あるプロダクションマッピングや個性的な衣裳を駆使した亞門さんのセンスが光る舞台です。

2015年東京二期会オペラ劇場『魔笛』Ⓒ三枝近志

(右)リストラされて絶望するサラリーマン、タミーノはコンピュータゲームの世界へ迷い込んで、3人の侍女に出会う。(左)日本を代表する演出家の亞門さんが、名作オペラを手掛ける。