「悪い男とわかっていても拒めない」のがオペラ界きってのイケメン、ドン・ジョヴァンニ。そんなドン・ジョヴァンニを演じさせたら当代一のバリトン宮本益光さんの「こだわり」のテーマがファッションと聞いて、大きくうなずく人は多いだろう。この日、宮本さんが現れたのは、七年来おつきあいのあるというミラノ在住のデザイナー、YOSHi FUNABASHi(船橋芳信)さんのコレクション会場だった。
「初めてYOSHiさんのところでスーツを仕立てのが二〇〇九年。それ以来、ミラノに行くたびに必ず一着は作っています。YOSHiさんの服は着ていると必ず人に“どこの服?”と聞かれる。そんな時、“いい演奏でしたね”と言われるのと同じような嬉しさを感じます。」
YOSHiさんは、実は並のファンでは太刀打ちできないほどのオペラ通でもある。36年前に初めてローマ・オペラ座でヴェルディ『運命の力』を観て以来スカラ座に通いつめた。そのうちに劇場関係者やアーティストと知り合いになったが、その中には往年の名指揮者ジャナンドレア・ガヴァッツェーニがいたというから驚きだ。そんなYOSHiさんのミラノのアトリエにはピアノがあり、宮本さんがそこでカンツォーネの名曲「禁じられた音楽」を歌ったというエピソードも披露してくれた。
宮本さんにとって、洋服=ファッションはいったいどんな意味を持つのだろうか。
「ファッションとは、誰かに向かって主張するもののようでありながら、実は自分自身に向いているものだと思うんです。ここぞという時に着る服には、自分を自分でいさせてくれる力があります。」
Studio ypsilon
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Tel:+39-02-5692308
Mail: yoshi@yoshifunabashi.it
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宮本益光 (みやもと ますみつ) バリトン
愛媛県出身。東京藝術大学卒業、同大学院博士課程修了。2004年『ドン・ジョヴァンニ』題名役(宮本亜門演出)で二期会デビュー。日生劇場開場50周年記念『メデア』、『リア』(日本初演)、新国立劇場『夜叉が池』(世界初演)学円、神奈川県民ホール開館40周年記念オペラ『金閣寺』溝口等も絶賛される。銀座・王子ホール「宮本益光の王子な午後」は20回を超える人気ぶり。2015年黒い薔薇歌劇団を結成し、構成・演出・字幕を手掛ける。今年7月日生劇場『ラ・ボエーム』の日本語訳詞を制作。多才な活躍が今後も期待される。
二期会会員
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