今年から来年にかけて、主演オペラの公演で続々デビューを飾る二期会の若手歌手たち。2015年ニューウェーブ・オペラ『ジューリオ・チェーザレ』アキッラと、日生劇場『ドン・ジョヴァンニ』のタイトルロールが決まったバリトン加耒徹、宮本亜門演出『魔笛』タミーノでデビューを飾るテノール金山京介、『ジューリオ・チェーザレ』クレオパトラ、『魔笛』夜の女王に抜擢されたソプラノ髙橋維は、中でも躍進めざましい注目株だ。東京芸術大学の先輩・後輩である彼らに、大学の校舎からほど近いカフェ＆ギャラリー モアノで、今後の抱負とプライベートについて語り合ってもらった。

髙橋 維「3人でこうして集まって話をするのは珍しいですね」

金山京介「僕と髙橋さんは大学院の同級で、加耒さんが1年先輩」

加耒 徹「学内では話題にのぼっても、それぞれ活動はバラバラでしたからね。コンサートで一緒になることはありましたけど」

──皆さんが歌手を目指したきっかけは何だったのですか？

髙橋「私は元々小さい頃からピアノを習っていて、中学では合唱が盛んだったのでピアノの伴奏をしていました。高校からは歌うほうが楽しくなってきたのですが、歌手志望というわけではなく、最初は先生になるつもりでした。歌手になったのは、もともと人前に出ることは嫌いではなかったので…」

加耒「うらやましい(笑)。私は逆で、人前に出るのがずっと苦手でした。母が声楽科を出ていたので音楽的な環境ではありましたが、4歳から高校まではヴァイオリンをやっていたんです。中高はブラスオーケストラに所属していました。この先どうしようかと考えたとき、ヴァイオリンの道に進むことはないと思いましたが、まさか自分が歌手になるとは思わなかったです」

金山「僕は合唱部に所属していて、その理由は女子が多かったから(笑)。高校2年生くらいから独唱の大会に参加して、高3のときに県のコンクールで優勝したんです。そこから浪人して国立音大に入学しましたが、3年生くらいまでは“やっちまったな…”っていう感じで。あまり熱心に勉強していませんでした。いい意味で惑わされない性格なので、マイペースでやってきたことが今につながっているのかなと思います」

──皆さんそれぞれですね。舞台でプレッシャーに打ち勝つ方法などはありますか？

髙橋「悪いことはあまり考えないよう、自分で自分をマインドコントロールしています(笑)。『魔笛』の夜の女王も、“もしハイFが出なかったら…”と考えないように、前向きなイメージを保つようにしますね」

加耒「ハイFは出せるソプラノの方も多くはないですよね。物理的に大変です」

髙橋「出し方というのも、習ったことはないんですよ。自分のイメージで出すしかない」

──まさに超絶技巧ですよね…。タミーノ役はプレッシャーですか？

金山「大変だと思いますが、まさかタミーノを歌えると思わなかったので、ただただ嬉しいです。この舞台が初役となります」

──期待しています!　そんな中で、日々のストレス発散法などはありますか？

加耒「あまりストレスはたまらないのですが、スポーツで発散することが多いです。ジムに通ったり…ただ無心に走りながら楽譜を覚えることもあります」

金山「加耒さんらしい。僕は運動が嫌いなんです。インドア派でゲームと漫画が大好きなので、漫画喫茶で暮らしたいと思うほど。起きて、寝て、漫画を読むのが理想の生活です」

髙橋「私もアニメと漫画が好きで、一番好きなのは『ヱヴァンゲリヲン』です。また新しい映画版が完成したらしいので、楽しみにしているんです。歌手仲間にもアニメ好きは多くて、この話でよく盛り上がるんですよ」

Café et Galerie Moineau

カフェ＆ギャラリー モアノ

東京芸大の裏手、谷中に近い池之端に位置する隠れ家のような一軒家カフェ。優しい木漏れ日があふれるフレンチカントリーな空間で、美味しいガレットと紅茶をいただくことができる。クラシック好きのオーナーがオペラをBGMにかけていることも!　入ってすぐ左手のギャラリースペースでは、芸大生をはじめとする若手アーティストを中心とした展示が定期的に行われている。ゴールデンレトリバーのイル店長に会えるのも楽しみのひとつ。

〒110-0008 東京都台東区池之端4-16-31　03-5834-7903　www.moineau.jp
営業時間：11:00～19:00(L.O. 18:00)　定休日：月・火曜日(祝日は営業)