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2022年度 特待生レポート [後期]

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河向来実(かわむかい くるみ)
第66期マスタークラス(佐々木典子クラス)

マスタークラス特待生として修了試演会までの稽古の様子と、一年の総括をレポートさせて頂きます。
一年の締めくくりとして、研修生たちは自分の取り組みたい演目を提出し、中期試演会のあとすぐに修了試演会の演目が決定しました。
私はドニゼッティ作曲『アンナ・ボレーナ』のアンナとジョヴァンナの二重唱を勉強させていただきました。同期の研修生たちも自分が挑戦したい役やシーンを提出し、ヴェルディやチャイコフスキー、マスネなど、とても聴き応えのあるプログラムとなりました。
しかし全員が稽古への思いを熱くしていた最中、新型コロナウイルスの感染再拡大により、研修生の多くが、稽古の欠席を余儀なくされました。出席停止期間が定められているため、たとえ体が元気だとしても稽古には出られず、どんどんと本番の日程が近づく中で、研修生各々が不安な想いに駆られていたのではないかと思います。
普段よりさらに稽古への集中力を高め、先生方からの一回一回のダメ出しやアドバイスをいかに短期間で吸収し実力に変えるか、このことがとても重要且つ、オペラを作り上げる上での真髄なのではないかと感じました。
現場に出たら数少ない稽古で、お客様に満足していただける公演を当たり前に作り上げなければならない、その当たり前をこの新型コロナウイルスの感染拡大により、私たちは肌で感じることとなりました。
私が勉強させていただいた『アンナ・ボレーナ』の二重唱は、実在したアン・ブーリンという女王を題材とした作品で、史実に基づいて描かれました。夫のヘンリー王からの愛情を感じられなくなったと感じるアンナは夫の浮気を疑い、侍女のジョヴァンナに相談しますが、ついにジョヴァンナは耐えられなくなり自分がその浮気相手だとアンナに打ち明けます。アンナは混乱するものの、悪いのは全てヘンリー王だとジョヴァンナを許し、この二重唱は終わります。
この二重唱のアンナを演じる上で特に難しかったのが、短い時間で移り変わる感情の変化を表現することでした。
特にジョヴァンナから自分が浮気相手だと打ち明けられ怒りに震える時間と、それを許すための時間の間隔が本当に短く、何度も演出家の今井伸昭先生にご相談しました。
「許した瞬間に微笑んでみなさい」とアドバイスをいただき、実際にやってみると本当に自然と気持ちが入り込み、気持ちの移行が簡単にできたことを覚えています。
私は役柄を考え込んでしまうことが多かったので、いつも先生方の何気ないお話やアドバイスにハッとすることがありました。その発見や気づきはこの一年で本当にたくさんあり、自分の音楽や演技においての糧になったと思います。歌手である前に人間であり、演じる役柄もほとんどが人間で、演技というよりもいかにその役柄の人生観や生活などを自分に落とし込むことができるか、そこがとてつもなく困難に感じたり、あるきっかけでとてつもなく簡単になったりすることを、この一年の研修で体感いたしました。そして自分の未熟さもこの一年で痛感いたしました。

研修所を修了し、来年度からはついに自分自身の力で学んでいかなければいけないのですが、「できないこと」を明確にしてくださり、それを「解決する方法」を研修所では教えていただきました。
そのメソッドを持ち続けながら、これから壁にぶつかった際は自分の力で解決していければと思います。コロナ禍で満足に勉強する機会が少なかった私たちでしたが、研修所ではたくさんの学びと演奏の機会をいただきました。
最後になりますが、粘り強く私たちにご指導をいただきました先生方、一緒に切磋琢磨し色んな発見をくれた同期の皆さん、そして日々私たちを支えてくださいました事務の皆様に、この場を借りて心より感謝申し上げます。
自分自身とこの一年の学びを信じ、これからも精進してまいります。

中江万柚子(なかえ まゆこ)
第66期マスタークラス(大野徹也クラス)

中期に引き続き、後期のレポート及び一年間の総括をさせて頂きます。
後期、私はヴェルディ作曲『イル・トロヴァトーレ』からレオノーラと総督の二重唱を勉強しました。この二重唱は昨年11月に出演させて頂いた「二期会オペラ研修所コンサート」でも歌った記憶に新しい一曲でした。しかしながらヴェルディの意図を楽譜から読み取り、技術の面でも芝居の面でも時間をかけて更に深く勉強したいと思っていたので、修了試演会の演目がこの曲に決まった時はとても嬉しかったです。
修了試演会は、ホールで大きな衣装を着けて演奏するという点において今までの試演会とは異なっており、稽古期間中はいつも以上に大きな会場を意識して稽古に励みました。目線の配り方や歩幅、手振りなどが教室よりも広いホールで見た時に、小さく細かすぎる表現になっていないかということに留意し、劇場にふさわしい大きく明確で分かりやすい表現を心掛けました。私は今までお芝居に偏りがちなところがあったのですが、ヴェルディの音楽は譜面通りに演奏すればそのままドラマになるということを先生方から教えて頂き、まずは音楽をしっかり構築し劇場にふさわしい表現をする、言葉で言い表すのは難しいですが、自分が演奏する上での音楽とお芝居のバランス感覚を、後期を通して学べたように思います。
またゲネプロでは、普段教室でしか見たことのなかったクラスの仲間たちの演奏を客席で見る機会に恵まれ、それぞれが広い劇場でのびのびと演奏している姿に刺激を受けるとともに、字幕とお芝居の動きの一致性について気づきを得ました。修了試演会では字幕も各々に制作をしていますが、自身の演奏と共に流れるのはゲネプロが初めてなので、自分の動画を何度も見返し、振り返るタイミングや目線を外すタイミングなど細かく調整を行いました。最後まで一生懸命作品と向き合い、仲間たちや助演の先生方に支えて頂き、本番は二年間の研修生生活を締めくくるにふさわしい集大成として、自分の今持てる力を最大限出し切れたのではないかと思っています。
マスタークラスで学んだ一年間、本当に充実していました。優しく温かい大野先生をはじめ、クラスの先生方はいつも私たちと真正面から向き合い、時に優しく時に厳しく私たちを導いてくださいました。クラス編成を初めて見た時は、ソプラノばかりの女子校クラス、どんなクラスになるのだろうとちょっとした不安もありましたが、始まってしまえばとても楽しいクラスで、励ましあい支えあいながら、あっという間の一年間でした。
大変ありがたいことに二年間特待生として通わせていただき、大学院修士課程との両立の中で、良い成績をキープしなければ、選んで頂いた特待生の名に恥じぬよう努力しなければと自分自身にプレッシャーをかけてしまうこともありましたが、ここまで導いてくださった先生方、支えて下さった方々のお陰でこの度、川崎靜子賞を受賞させて頂き無事に修了することが出来ました。コロナ禍で様々な制約がある中、最大限の実践的な研修の場を与えて下さった二期会オペラ研修所の皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。
二年間研修所で学んだオペラ歌手としての基礎を存分に活かし、将来世界に羽ばたけるようこれからも精進いたします。

鄭美來(ちょん みれ)
第67期本科(鹿野由之クラス)

本科の後期は、修了試演会に向けそれぞれの演目に取り組みました。演目の希望を提出し、その希望を元に、研修生ひとりひとりの課題や声質などを踏まえて先生方が演目を割り当ててくださりました。
私が学ぶことになったのは、マスネ作曲『マノン』第3幕よりデ・グリューとの二重唱です。マノンがデ・グリューの心を取り戻そうと誘惑をするシーンで、女性の魅力をたっぷりと表現しなくてはなりません。自らが希望し学ぶことになったものの、声楽を学び始めた頃から「色気が足りない」と散々言われてきた私にとってはあまりにも挑戦的な役柄でした。ソロでアリアや歌曲を歌う際にも、自分の感情を大きく表現したり性を前面に押し出した演技に苦手意識がありました。ただ、克服しようとするにも具体的にどうすればよいかが分からない状態だったため、今回マノンを学ぶことで先生方からヒントをいただけるのではないかと思い希望したものでした。
案の定、先生方からは「女性の魅力」の表現について毎回のようにご指導いただきました。マノンとはどういう性格の女性なのか、原作を読み理解したつもりで授業に臨みましたが、演技指導の先生のご指摘によって、最初考えていたものからは180度違う演技になりました。女性が持っている武器すべてを使う、そういったキャラクター性がどうしても自分の中に落とし込めず苦労しました。まさに一進一退といった感じでしたが、苦手なものに挑戦し理想になかなか近づけない私にも、見捨てず厳しいお言葉をくださる先生方に背中を押していただきました。
感情をうちに篭めず、客席に向けて最大限の表現をすること。歌唱においても大きな課題となっていたことが、本科での一年間、特に後期に『マノン』を学んだことによって大きく成長できたのではないかと実感しております。
また、特待生として在籍させていただけたおかげで、研修所外での学びも充実した一年となりました。月に一度行われるドイツリートの講習会に参加し学びを深めたり、レッスンに通い自分の発声を見直したりと、金銭や時間に余裕が生まれたことでより多くのことに挑戦できたように思います。
来年度はマスタークラスに進級します。予科・本科とは扱う作品も変わるので、どのような演目に触れどのような役を演じられるのか、今からわくわくしています。自分自身の次なる課題は「爆発的なエネルギー」を内から出すことだと思っています。次の一年間で更にステップアップできるよう、また、堂々とお客さまの前で演奏・演技できるような素敵な歌手を目指して、精進して参ります。

山元三奈(やまもと みな)
第67期本科(鹿野由之クラス)

前期に引き続き、後期の授業についてレポートをさせて頂きます。

本科の後期で私が勉強させていただいたのは、ヴェルディ作曲『リゴレット』のジルダ役です。その中から私は、第2幕で歌われるリゴレットとジルダの二重唱を勉強しました。この曲は第2幕のフィナーレで歌われる曲で、ジルダの父リゴレットは、誘拐された娘ジルダを探しに公爵の宮殿に向かいます。そこにジルダが「辱めをうけた」と泣きながらリゴレットの前に現れ、これまでの経緯を全て話します。それを聞いたリゴレットは公爵に復讐を誓うという場面です。私自身、オペラアリアでもヴェルディ作曲のものに取り組んだことがなく、私にとって挑戦となる曲でした。
歌唱では、譜読みの段階からヴェルディの音楽に苦戦し、中々思うように歌うことができていませんでした。また音程の高低差がとても激しい曲だったので、レガートに歌うということが中々私にはできず苦労しました。
授業では、鹿野先生を始め声楽講師の先生方からたくさんのアドバイスをいただきました。重唱を歌い終わったあとに、一人一人の先生から自分の課題に沿ったアドバイスを下さるので、毎回練習で苦労していたことがひとつずつ解決していったように思います。指揮者の佐藤宏充先生からは、ヴェルディの音楽について私が勉強不足な所を丁寧に教えて頂きました。またどうしても曲を歌うことに必死になってしまい、指揮から遅れてしまうことがあり、演じながらもどのように指揮を視界にいれるか細かなこともご指導頂きました。自宅で練習している時は自分の声と楽譜に必死になってしまう所があったので、佐藤先生から「メトロノームを使って練習すると良い」といわれテンポ感をなるべく崩さないように歌うことを徹底しました。演出の澤田康子先生からは、どうしても話のあらすじから悲劇的なシーンだったので、ジルダではなく自分が客観的にジルダの役を分析し、悲劇を演じていることをご指摘頂きました。オペラをやる上でいかに冷静な自分が必要なのかということを改めて痛感しました。
二期会オペラ研修所の研修生として、この1年間で本当にたくさんのことを学びました。私自身が知らなかったオペラの世界をたくさん見て聞いて、少しは成長できたかなと思います。マスタークラスに進級する予定なので、来年度からまた沢山のことを学べることが今からとっても楽しみです。今後も本科で学んだことを忘れずに、舞台に早くたてるよう精進してまいりたいと思います。

輪方綾乃(わかた あやの)
第68期予科(小森輝彦クラス)

予科では、後期もモーツァルトの作品を中心に取り組みます。朝クラスでは、そこにチマローザの『秘密の結婚』も加え、『フィガロの結婚』、『コジ・ファン・トゥッテ』の3作品を試演会に向け学びました。
前期と異なるのは、ニ~四重唱までのシーンに取り組んだ点です。1つのシーンに同時に関わる人数が増えたわけですが、人数が多いから難しい、とかそういう事ではありません。ただ、二重唱とは違う技術が音楽にも芝居にも求められ、研修生全員が前期とは違う悩みの中、学んだと思います。
今回私は『フィガロの結婚』14番~15番のスザンナ役に取り組みました。スザンナはこのシーンで「隠れている」時間が大半です。さらにスザンナ以上に「隠れている」時間が長いのはケルビーノです。もちろんこの二人はそれぞれ違う心理状態で隠れています。ここで大切なのは、物理的に姿かたちが隠れている事ではなく、隠れている時の心の状態を表現する事だと、演技指導の岩田達宗さんは仰りました。もっと言えば、たとえ客席から丸見えでも「隠れている」事が出来ると。
また、「歌っている時も歌っていない時も、身体が役であり続ける事が、声とも直結している」という事を主任の小森さんは1年を通して伝え続けて下さいました。心の状態と身体の状態の両面から、具体的なメソッドを混じえ発声について、研修生ひとりひとりの現状を踏まえご指導くださりました。
そして、後期から指揮の河原哲也さんがアンサンブルを徹底的にご指導下さいました。テキスト、オーケストレーション、ディナーミク等…様々な観点から音楽の作り方について考える大切さを、研修生は皆実感したと思います。
今回のレポートではより具体的な講義内容をお伝えさせて頂きました。もちろんまだまだ山程あります。舞台人としての姿勢やひとりひとりの課題について、全ての講師の方々が1年を通してご指導くださいました。時にはお笑い芸人の名前や五七五が飛び交います…書き出すときりがありません。
様々なアプローチでも、講師の先生方のお話にはいつも繋がる部分があるのを、1年通して強く感じました。繋がる部分がある、と頭で思うものの、それを噛み砕き消化して繋げていくのは自分自身です。1週間のうち、6時間の講義の時間以外の162時間が勝負だ、というお話もありました。そんな朝クラスに在籍し、自分自身との向き合い方も深く考える1年となりました。
1年間、このような充実した環境で学ばせて頂きありがとうございました。講師の先生方、助演の方々、研修生、養成部の方々、二期会オペラ研修所をご支援くださっている方々、皆様に心より感謝申し上げます。

松原三和(まつばら みわ)
第68期予科(宮本益光クラス)

今回は、後期授業の様子や、取り組んだ演目についてレポートさせて頂きたいと思います。
予科夜クラスでは、後期は、モーツァルト作曲『フィガロの結婚』『イドメネオ』『後宮からの逃走』、チマローザ作曲『秘密の結婚』を取り上げました。
私が後期学ぶことになったのは、『フィガロの結婚』の伯爵夫人役です。二期会公演の『フィガロの結婚』を観てから、伯爵夫人をいつか演じたい、学びたいと思っていましたので、後期に学ぶ機会を頂けとても嬉しかったです。
演じることになった場面は、第2幕の伯爵、スザンナとの三重唱です(No.16 フィガロの登場前まで)。
衣裳部屋に隠れているケルビーノ(ケルビーノは前の場面で窓から飛び降り、逃げています)が伯爵に見つかってしまうのではないかという緊張と、いざ衣裳部屋扉を開けるとスザンナが出てくる驚きなど、感情・表情の変化や、ロジーナの部分も見せる場面でした。どうすれば、舞台上で伯爵夫人としていられるか、どのように表現するかなどを、クラスの同じ役を演じる研修生と、授業の前後に相談したりしました。

そして後期の授業の中で特に印象的だったのは、大倉由紀枝先生がご指導に来てくださったことです。二期会公演でも伯爵夫人を何度も演じられている先生から、演技や歌唱法、表現のご指導を頂けたことは、とても刺激的でした。
前期は牧川修一先生がご指導に来てくださいました。二期会オペラ研修所には、舞台で活躍される素晴らしい方々が、講師として私たち研修生をご指導くださっています。その先生方から直接ご指導いただけるのが、研修所の魅力の一つではないかと思います。

いまだ続くコロナ禍で、演技する上での制約はあります。その制約があるからこそ、相手と舞台で距離があっても、無いように見える演技、自然な演技、どうすればその役と相手役の関係が分かるかをより考えることができたのではないかと思います。

最後になりましたが、特待生として今年度学ばせて頂けましたこと、心より感謝申し上げます。来年度も予科で学んだことを活かし、本科生として、精進してまいります。

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