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2022年度 特待生レポート [前期]

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河向来実(かわむかい くるみ)
第66期マスタークラス(佐々木典子クラス)

私が二期会のマスタークラスに特待生として入所させていただき、前期~現在までの大まかな流れやクラスの雰囲気などをレポートさせていただきたいと思います。

まず講師陣ですが、夜クラスは佐々木先生を筆頭に素晴らしい講師の方々ばかりで、歌や演技のアドバイスだけでなく、これからのキャリアや現場でのマナーや心構えなども細かく教えて下さいます。
私は昨年度まで東京藝術大学の大学院に所属しておりましたため、その時にお世話になった先生方や、一度エキストラの仕事をした際にソリストをされていらした先生など、基本的に皆様とお会いしたことがあり、最初は少し緊張していましたが、すぐにクラスに馴染むことができました。 また、一緒に勉強させていただいている同期のメンバーはとても個性的で、自分自身が持ち合わせていない役への向き合い方や、発声のアプローチの仕方など、学生時代とはまた違った環境で毎回研修所に行くのが楽しみになっています。

私は前期でコルンゴルト作曲の『死の都』のマリエッタをオペラの一部を取り上げてパウルとの二重唱と、マリエッタのアリアを勉強させていただきました。
コルンゴルトの曲はとても旋律的で美しいメロディが多い反面、現代音楽的な要素も多く散りばめられているため、もちろん音程をきちんととったりリズムを的確にとることも難しかったですが、それを超えて役柄の心境と擦り合わせるのがとても難しかったです。
稽古中も先生方から、役についてのアドバイスや音楽の作り方など稽古の中だけでなく、終わってからもとても丁寧に教えてくださり、稽古に向かうたびに自分でも少しずつマリエッタの性格や自分との共通点などを理解することができ、本番は自分の今出せる力を出せたかなと思いました。
佐々木先生にも稽古のたびに、「とっても役にあってるから頑張りなさい!」と言っていただきすごく自信につながりました。
そしてありがたいことに、夏休み中に開講された森内剛氏の特別講座でもこのマリエッタでレッスンしていただくことができました。
この時、自分の音楽作りに不安や焦りを感じていたのですが、それを見事に森内先生に言い当てられた時はすごく驚いたのと同時に、もっともっと役に対しても音楽に対しても貪欲に追求しなければいけないなと感じました。
この二期会研修所に入所してから、学生の時からとは比べ物にならないほど自分ともいただいた役とも向き合う機会が増えました。

なかなか納得できないところや不安なところをひたすらに研究し、さらに深めていくということを教えていただいた二期会研修所で後期からも、同期や先生方の力をお借りして自分なりに精進していければなと思います。

中江万柚子(なかえ まゆこ)
第66期マスタークラス(大野徹也クラス)

私は、昨年度特待生として本科に入所し、今年度も引き続きマスタークラスの特待生として勉強を続けさせて頂いております。このレポートでは、特待生制度に応募した経緯やクラスの雰囲気、授業での学び等について触れていきたいと思います。

特待生として勉強させて頂いているこの2年間、私は大学院修士課程と並行して通所しており、経済的な負担が重なることを避けるために、特待生制度に出願いたしました。私はそれまで学校外での仕事や経験をあまりしておらず、ただの学生でしかなかった自分に果たして可能なのか、と不安に思っておりましたが、2021年度の募集より、外部から本科に入所した者にも特待生として採用頂ける可能性のある制度に変わったことを知り、この機会を逃す手はないと挑戦を決意しました。

2年目の採用は、マスタークラスを外部から受験する方々と一緒に再度特待生試験を受け直し、晴れて合格をいただきました。お陰様でこの2年間、日々の授業に集中して取り組むことが出来、音楽漬けの毎日を送っております。論文の執筆や大学院の授業との両立は、決して楽なものではありませんが、それぞれの場所で濃密な時間を並行して過ごすことにより、学んだことをすぐに実践に移すことが出来るため、勉強したことに対する理解がより深まると感じています。このような恵まれた環境に身を置かせていただけることに感謝し、いつか歌手としてこのご恩を還元できるよう、これからも精進してまいります。

私の所属している大野先生クラスは、大野先生をはじめとするそれぞれの声種の素晴らしい先生方に、温かく、時に厳しく熱心なご指導をいただいています。役作りや歌のアドバイスに限らず、楽譜との向き合い方や効果的な音楽の作り方、舞台上での所作についてなど、細部にいたるまで丁寧に根気強くご指導くださるので、先生のご期待に応えたい、次に見て頂く際には更なるアドバイスを頂きたい、と私たちも一生懸命取り組んでおります。生徒は、本科から進学してきたメンバーが多い中、マスタークラスから入所したメンバーとの壁も無く、和気あいあいと授業に参加しております。女性のみのクラスということもあるのか、普段から些細なことでも相談できる温かい雰囲気があり、それぞれの役作りや互いの演奏について意見交換を行うことで、それぞれがより良い演奏を目指し勉強に取り組んでいます。

前期、私はマスネ作曲『マノン』より、第3幕のデ・グリューとのデュエットを勉強しました。マノンの蠱惑的な一面が色濃く表現される場面ですが、それだけではないマノンのデ・グリューへの熱い思いや彼女なりの葛藤を、どのように音楽に反映させ、魅力的なマノン像を作り上げるか、限られた時間の中で試行錯誤を重ね、役と深く向き合うその過程を音楽、演技の両面からしっかりと勉強させて頂きました。

夏休み中に受講させていただいた森内剛氏の特別講座でも、前期に勉強した『マノン』を見て頂いたのですが、本番後に改めて、マスネが音楽に宿したドラマを楽譜から見つめ直す大変良い機会となりました。また森内氏からも「今後もぜひ『マノン』を勉強して更に深めていってほしい」とお言葉を頂き、今回演じたこのマノンという役を、これからも大切に、時間をかけて役への理解を深めていきたいと感じました。

現在、中期のオペレッタ作品では振り入れが終わり、各々が自分の課題と向き合いながら稽古に励んでいます。研修生としての残り少ない日々を1日も無駄にすることなく、今後もクラス一丸となって精進して参りたいと思います。

鄭美來(ちょん みれ)
第67期本科(鹿野由之クラス)

私は大学院修士課程を修了し、昨年度、予科から研修所に入所しました。大学院では独唱領域を専攻していたため、在学中の2年間はオペラを学ぶことなく過ごしました。オペラアリアですら、片手で足りるほどの曲数しか触れていません。数年ぶりにオペラを学ぶということで、魅力的な環境を最大限に生かすため、基礎をしっかりと学べる予科から通うことに決めました。

予科ではモーツァルトのオペラ作品を通して、演技はもちろん舞台上での立ち姿や表情、手振りなどの基本について学ぶことができました。講師の先生方の丁寧なご指導のおかげで、今の自分になにが必要かを具体的に知り、充実した授業のなかで研鑽を積めたことで、今年度本科は特待生として通わせていただけることとなりました。

本科最初のカリキュラムは、日本人作曲家によるオペラ作品でした。私は青島広志作曲の『黄金の国』1幕からワンシーンを抜粋し、ゆき役を演じることになりました。『黄金の国』は過去の上演映像や音源が流通していないため、作品を学ぶにあたりとても苦労しました。遠藤周作による原作戯曲を読み、そして作品の舞台となっている17世紀長崎で行われたキリシタン弾圧についての資料に目を通しました。中でも印象に残っているのが『黄金の国』の後日談である小説『沈黙』を原作とした映画『沈黙-サイレンス-』です。当時のキリシタンらの苛酷な生活や拷問の様子は、戯曲を読んだだけでは脳内で想像するのみでしたが、映画内であまりに鮮烈に再現されていたため、映画を視聴する前後では作品に対する思いが大きく変わりました。割り当てられたシーンだけでは何気ない日常の一コマにすら見える場面ですが、当時の様子について映像を通して知ることで、登場人物らにとっての「日常」が私の考える日常と大きく違っていたこと、そして彼らの台詞ひとつひとつの重みを実感するきっかけになりました。また、映像と舞台では表現方法が全くの別物だと、演技指導の先生は常々仰っていました。映画という映像作品によって学びを深められたことで、じゃあオペラではどう表現すればよいのだろうかと、より違いを意識して演技と向き合うことができました。
普段接する機会の多いヨーロッパの作曲家によるオペラ作品はそのほとんどがフィクションであり、また我々の住む日本とは生活様式が大きく異なることから「現実的に」作品を捉えることは今までありませんでした。遠い世界のおとぎ話のように、自分の生きている世界とは全く別物だと区別し、無意識に登場人物を遠ざけていたように思えます。しかし今回の、日本が舞台かつ史実に基づいた作品を学ぶという経験を通して、「登場人物の日常を考える」ことがいかに重要かということを実感しました。
今回得られた学びを心に留めながら、作品や人物への理解をより深め、引き続き精進いたします。

山元三奈(やまもと みな)
第67期本科(鹿野由之クラス)

私は、東京藝術大学音楽学部声楽科をこの春に卒業し、今年度よりこちらの二期会オペラ研修所の本科(特待生)に入所し、オペラ歌手になる夢を叶えるため学ばさせていただいています。まずこちらの研修所を志望した理由は、現役で活躍されている先生方から直接ご指導していただけること、オペラの舞台で必要になってくる演技指導を演出家からご指導していただけること、そしてオペラの舞台に立ちたいと同じ志を持った仲間がいるということから受験を決めました。研修所に入所してから、本科の同期の皆さんは真面目な方ばかりで課題に真剣に取り組む姿を見て、いつも刺激をもらっています。お話をしているとオペラの話や音楽の話が飛び交い毎回授業に向かうのもとっても楽しみです。

本科の前期の授業内容としては、邦人作品に取り組みました。私が取り組んだ演目は、青島広志作曲 オペラ『黄金の国』でした。私自身、初めて和物のオペラに取り組みました。最初は不安の気持ちの方が大きかったのですが、所作の先生から着物の着付け、日本人としての所作や、舞台での立ち振る舞いなどを一つ一つ丁寧に教えていただきました。授業では着物を日常生活で着ることがないため、歌いながら役を演じることにとても苦戦しました。その分毎回の授業では、先生方に指摘をいただいたことを少しでも改善できるよう、授業内容を録音し家に帰ってから復習をしていました。また、授業は基本ダブルキャストで行われるため同じ役を演じる同期の姿を見て勉強することができました。ダブルキャストで行われているので、相手の良いところを参考に自分もやってみたり、悩んでいることがあればお互いに相談し合える環境があったのでとても良い学習環境でした。歌の指導では、大学時代は1人の先生に声楽を指導して頂いていましたが、研修所ではソプラノからバリトンの先生まで声種にこだわらず様々な視点からご指導をいただくことができました。そのおかげもあって、普段自分の気づいていなかった部分が見えたり音楽の捉え方をたくさん教えて頂けています。

研修所は中期・後期とまだまだ授業は続いていきますが、学べることを最大限吸収し素晴らしい先輩方のように舞台に立てるよう精進してまいりたいと思います。

輪方綾乃(わかた あやの)
第68期予科(小森輝彦クラス)

私は現在、オペラ研修所68期予科朝クラスに在籍しています。
前期授業では、主任でバリトンの小森輝彦さん、テノール小原啓楼さん、ソプラノ隠岐彩夏さん、メゾソプラノ増田弥生さんの4名の声楽講師の先生方、ピアニスト三澤志保さん、木下志寿子さん、そして演技指導の岩田達宗さん、古川真紀さんにご指導頂きました。
現在進行形で舞台に立たれている、もしくは携わられている方々の講義は、技術面はもちろん、稽古や本番に臨む上で演奏家に求められる要素についても、具体的にレッスンして下さいます。例えば、舞台マナーや舞台の準備、生活習慣に至るまで、実践を通して学びました。現場をよくご存知の先生方の経験談を、研修生も自分自身の事としてイメージして、前期試演会に向けて勉強しました。

予科の前期は、モーツァルトの作品から、レチタティーヴォ・セッコを含む二重唱を学びます。このクラスの研修生は経歴や習熟度、年齢も様々です。レチタティーヴォ・セッコは未経験の人、日本語でしか演奏した事がない人、専門的に学んできた人等様々で、各々が抱える課題も全く異なります。先生方から、「それぞれの違い=個性は才能であり、医者が処方箋を出すように、研修生一人一人の現状に即したアドバイスをする」、というお話が初回の授業でありました。
自分と全く違う課題を持つクラスメイトのレッスンは、聴講している時こそ多くの学びや発見があるように感じますし、先生方もその事を強調してご指導下さいます。
このような恵まれた環境でコンスタントにレッスンを受けられる事、そしてソロ試験や試演会、コンサート等の本番の機会がある事は、演奏家を目指す者にとってはとてもありがたい事です。それは在籍しているどの研修生も感じている事だと思います。誤解を恐れず申しますと、特待生であってもなくても、研修で享受出来るものに差は無いと感じています。その点もこの研修所のポジティブな面であると思いますし、だからこそ、各年次2名ずつの特待生制度は、プロを目指す人間の後押しをより一層してくれる制度だと実感しています。

後期は引き続きモーツァルト作品と、チマローザの『秘密の結婚』にも取り組みます。後期からは、先生方のご提案でカヴァーの制度を取り入れ、勉強していく事になりました。文字通り研修生同士で複数の役をカヴァーし、本役に代わりいつでも舞台に立てるよう準備をします。これは先生方にとっても新たな授業での取り組みだそうです。そういった違う角度からの勉強も生かし、よりステップアップ出来るよう研鑽を積んで参ります。

松原三和(まつばら みわ)
第68期予科(宮本益光クラス)

憧れていた二期会オペラ研修所で、特待生として学ばせて頂いておりますこと、心より感謝いたします。

私の通う予科(夜クラス)は、宮本益光先生をはじめ、ご活躍されている素晴らしい講師の方々が、時には厳しく、愛情深く、研修生一人一人に根気強く、丁寧にご指導くださいます。
クラスの先生達がとても明るく、温かい雰囲気を作ってくださるので、研修生は毎回の授業で、失敗を恐れることなく、のびのびと歌うことができていると思います。
私の同期は、とても個性的で、それぞれ発声、役作り等へのアプローチが違います。私自身に足りないもの、ないものを持ち合わせた同期から、毎回の授業で沢山の刺激を受けています。
年齢も出身も様々ですが、壁がなく、演技の中で行き詰まった時には、悩みを相談したりできる、素晴らしい仲間に出会うことができたと感じます。
前期もそして現在でも、同期に助けて頂き、演目に前向きに取り組むことが出来ているので、とても感謝しています。
大学院までは、一人の先生からご指導頂いていましたが、研修所では、さまざまな声種の先生からご指導いただけるので、いろいろな方向から、発声のアプローチ、役作り、音楽への向き合い方を学ぶことができます。

予科では、前期は、モーツァルト作曲のオペラ『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『ドン・ジョヴァンニ』より、それぞれの研修生の声にあった役から、1曲を取り組みます。各曲とも基本的にダブルキャストで行われるため、同じ役を演じている同期から、沢山学ぶことができます。
私は、前期は『ドン・ジョヴァンニ』の中の、ドン・オッターヴィオとの二重唱を取り組みました。
ドンナ・アンナが「どのような人なのか」、「どう考えているのか」、役と向き合い方を、音楽でどのように表現するか、演ずるかを学ばせて頂きました。

現在は、後期に入り『フィガロの結婚』の伯爵夫人を勉強し、これまで苦手と思い避けてきた面を取り組んでいます。今、この苦手なことを取り組む機会をいただけたことに感謝して、前向きな気持ちで、諦めずコツコツ頑張りたいと思います。
これからも、同じ目標に向かって頑張る同期を大切に、今この恵まれた環境で勉強させて頂けていることを、決して当たり前だとは思わずに、後期も演目に取り組みたいと思います。
そして、素晴らしい二期会の先輩方と一緒に舞台に立たせていただけるよう、精進してまいります。

オペラ歌手育成支援

―― 世界で活躍する声楽家を育成するため皆様からのご支援をお願いいたします。

東京二期会では、声楽家を養成するために、二期会オペラ研修所を開設しています。同研修所は「創造の現場に直結する実践的研鑚の場」として、プロフェッショナルなオペラ歌手の育成を行っています。研修を修了し5年の間に東京二期会オペラ公演には約50名がキャストとして出演し、二期会合唱団のメンバーや他団体の公演で活躍しています。
世界を目指す歌手は、研修期間中さらにレベルの高い研修を必要としており、海外研修や東京二期会が招聘したマエストロや演出家などによる指導を行い多くの経験を積んでゆく計画をしています。
しかし研修生に財政的負担を高めることは成長への障害となるため、奨学金制度を充実し競争意識を持って研修を行っていく所存です。つきましては奨学金制度を拡充するために、皆様からのご支援をお願いしたくご案内いたします。
皆様のお力により世界で活躍する新たな声楽家の育成のために東京二期会は指導してまいります。

二期会オペラ研修所 所長 牧川修一

■オペラ歌手育成会〈年会員〉
 一口 個人10万円 法人20万円
・利用目的:研修生奨学金への充当、研修所運営費への充当

・御礼内容:二期会オペラ研修所コンサート、二期会新進声楽家コンサートへのご案内
二期会オペラ研修所コンサート、二期会オペラ研修所修了試演会
各プログラムへのご芳名の掲載、ホームページへのご芳名の掲載

■ヤング・シンガーズ・サポート〈オペラ歌手育成寄付〉
 一口1,000円・3口以上
・利用目的:研修生奨学金への充当、研修所運営費への充当
・御礼内容:二期会オペラ研修所コンサート、二期会オペラ研修所修了試演会
      各プログラムへのご芳名の掲載(1万円以上ご寄付の方)
      ホームページへのご芳名の掲載(1万円以上ご寄付の方)

▼「オペラ歌手育成支援」に関する詳しいご案内とお申込方法はこちらをご覧ください
【基金・ご支援ガイドブック】
 ご支援はインターネットからのクレジットカード払いでもご寄付いただけます

▼東京二期会では上記の他にもさまざまな事業目的に対するご支援をお願いしております
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