TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

ENGLISH

公益財団法人東京二期会について
声楽会員「二期会」とは
支援団体・企業

二期会オペラ研究所のご案内


2023年度 特待生レポート [中期]

2023年度後期 特待生レポートはこちら>>

中川郁文(なかがわ いくみ)
第67期マスタークラス(岩森美里クラス)

中期では新たなジャンルである「オペレッタ」に挑戦しました。オペレッタにはオペラとは異なる特徴があり今回の経験を経て5つの点についてまとめました。

1. 軽快でユーモアのある表現:オペレッタは通常、軽妙なトーンとユーモラスな要素を含みます。今回も皮肉やダジャレを交えた台詞があり、自分なりに解釈した言葉は一般的に伝わるのかどうか、その役の口調として適しているのかどうか授業の中で先生方にコメントをいただきながら、ライブとして楽しめる舞台を目指しました。

2. 歌唱と台詞のバランス:歌唱だけでなく、セリフや台詞もストーリーを進めるのにとても重要です。研修生は歌唱力と同時に、言葉を明瞭かつ感情豊かに伝えるスキルを磨きました。最後の音を歌った後すぐセリフを言わなければならないときにテンションが落ちないかどうか、歌声と話し言葉で明らかに別人にならないように、など丁寧に修正していく作業がありました。

3. キャラクターの表現力:オペレッタはキャラクター設定や物語進行に重点が置かれることがあり、演者は役柄に合った独自のキャラクターを構築し、表現する能力と舞台を進めていくことが求められます。同じ役でも場面ごとに演者が変わる場合、その人物像のズレが少なくなるように、入れ替わりの際には舞台が止まらないようになど、「間」に注意することを求められました。

4. ダンスや舞台運動のスキル:オペレッタには時折、軽快なダンスや社交ダンスが組み込まれることがあります。クラス全員で受けたダンスレッスンではポップなものからワルツまで、舞台で最低限対応できるようなステップを教わりました。今回も曲目によってはダンスナンバーがあり、特別な振りを付けてもらって披露するグループもありました。

5. 言語の遊び心:オペレッタは時には特定の文化や時代背景を反映しています。研修生には言葉の遊び心やニュアンスを捉え、目線や所作で効果的に表現することが求められました。また今回取り上げた4つの作品の内3つはドイツ語の作品でしたが、ドイツ語の歌詞に合わせて休符が使われ音楽と言葉が見事にリンクしており、それを日本語歌詞で歌唱するとどうすれば自然なのかを考えました。

演出家の飯塚励生先生の台本で4つのオペレッタ作品から音楽と演技の要素をバランス良く抜粋、プログラムし、クラスで1つのエンターテインメント・ストーリーを上演することになりました。

私はヨハン・シュトラウス作曲『ウィーン気質』の中から伯爵夫人役と、中間部のストーリーテラーとしての台詞を担当しました。伯爵夫人の登場シーンです。特徴的な雰囲気と優雅さに惹かれる音楽で始まり、続く中低音の語るアリア、そして四重唱へ。音楽的にも演技的にもスピーディーで連続的に違う面を見せるという挑戦的な要素を感じました。また台詞の部分では『こうもり』から『チャールダーシュの女王』へ繋げる場面において、ユニークな言葉が満載で、表現力と器用さが求められました。それが歌唱でなく台詞でなければならない理由が見出せるように、ややこしい複数人の登場人物の説明を音量や速度を変えて伝える発語の工夫が必要でした。

さて、私はこれまでオペレッタは『天国と地獄』エウリディーチェ役と『こうもり』ロザリンデ役、アデーレ役にトライしたことがあります。今回の音楽と役柄で魅せる伯爵夫人は、ロザリンデほど派手ではないけれども麗しく、精巧な表現力と華やかな魅力を要求されるという、新しい役柄でした。オペレッタ特有のリズミカルで軽快な旋律に合わせ、設定された日本語歌詞を元に、マエストロ大勝秀也先生と相談し語感を確かめながらより良い表現を模索しました。重唱の場面では共演者と連携をし、コメディとしてそれぞれの役柄がより一層魅力的になるよう協力し合いました。このプロセスを通じて、チームワークや共同作業の大切さを感じました。加えてクラス全体の雰囲気もとてもよく、みんな限られた時間の中で集中して取り組んでいました。

挑戦的な中期を通して、オペラ研修生としての成長を実感しています。オペレッタの世界への一歩は新たな可能性を広げ、これからの学びと成果に期待が膨らみます。

植田雅朗(うえた まさあき)
第67期マスタークラス(岩森美里クラス)

中期の授業の様子についてレポートさせていただきます。
二期会オペラ研修所の予科と本科は前期・後期の2期制ですが、マスタークラスはそれに中期を加えて3期制となっています。この中期のカリキュラムは「日本語の歌詞(訳詞を含む)・台詞に触れる。ジングシュピール・オペレッタ等、台詞と歌唱の自在なパフォーマンスを習得する。」です。特に日本語訳詞を用いたオペレッタが課題となりました。
そして私が所属している夜クラスでは、『こうもり(Die Fledermaus)』『ウィーン気質(Wiener Blut)』『チャールダッシュの女王(Die Csárdásfürstin)』『天国と地獄(Orphée aux Enfers)』の4作品より場面を抜粋し課題としました。そしてこの抜粋した場面を、演出の先生が書き下ろしてくださった台本のもとに組み合わせて3幕構成のオペレッタに仕立てました。その中で私は『こうもり』のファルケ役を中心に、『ウィーン気質』のギンデルバッハ侯爵役、そして『天国と地獄』より「ハエの二重唱」に取り組みました。今回は日本語台詞によって物語を進行させましたが、このファルケ役は楽曲よりも台詞に重きが置かれていました。

今回私が特に苦労した点は主に2つです。まず、母国語である日本語をはっきりと客席に届けつつ、快活なリズムで展開されていく役同士のやり取りをどのように見せるかという課題に直面しました。単純にリズム良く反応を見せればいいのではなく、何に対してどのように反応したかを見せながら、かつ台詞が生むリズムや歯切れの良さを損なわずに物語を展開していくことに、大変苦労いたしました。この点は稽古を重ねていくことで徐々に改善していきました。また共演した同期生や演出の先生からたくさんアドバイスを頂戴し、それを実践していくことで、少しずつでしたが本番までに形にしていくことができ、本番では台詞の場面でいい塩梅を見出すことができたと思います。

そして、私が演じたファルケ役が物語を展開していく役であったので、いかに物語に幅を持たせるか、台詞のリズムを維持しながら物語を展開することがかなり難しい課題でした。オペレッタの役の個性はやはりこの台詞の言い回しによって左右されるので、この点にかなり慎重であったと思います。

私にとって中期の課題は大変難しいものでした。しかし先生方が「面白い」と「面白くない」を明確に話してくださり、表情作りに対しても的確なアドバイスを頂けたことで、中期の試演会に臨むことができました。いよいよ後期。1年の集大成として数多くの演目に取り組みます。今回の、台詞を扱うことで得たものを自分の糧にしながら、邁進していけるように努めたいと思います。

大澤桃佳(おおさわ ももか)
第68期本科(宮本益光クラス)

本科の前期後半は、ベルカント作品に取り組みました。
私は、ドニゼッティ作曲『ランメルモールのルチア』の2幕でルチアとエンリーコが歌う二重唱を勉強しました。先生方が、研修生ひとりひとりに合った作品・曲を考え、選んでくださいました。演目が発表された時は、今までルチアが自分に縁のある役だと思っていなかったので驚きと不安でいっぱいでしたが、先生方が今の自分に与えてくださった課題だと思い、今まで挑戦したことない役と向き合うことへ気持ちが高揚し、より一層気が引き締まりました。

音楽稽古の中で大変だったことはp(ピアノ)の表現です。
指揮のキハラ良尚先生に、pが大きすぎると何度もご指導いただき、その度に自分の声や発声と向き合い、どうしたら美しいpの表現ができるか模索し続けました。自分が精一杯やっていると思っても聴き手にその表現が伝わらないとただの自己満足になってしまいます。

立ち稽古では、始めは動きに必死になりすぎて相手が今何を語っているのか耳を傾けることができず相手の言葉より先に身体が動いてしまい、相手の声や言葉をよく聞くようにご指導いただきました。稽古回数を重ねるうちに相手の言葉を受けて感情が生まれ、表出されていく感覚がわかってきて「演じる」というより、その役を「生きる」ための1歩を踏み出せた気がしました。

ルチアへの理解が深まると同時に、前期前半で『夕鶴』のつうを演じた時も、大きな課題だった感情に飲み込まれて冷静さを欠いてしまう面に悩むことも多くありました。感情の高ぶりで呼吸が浅くなってしまったり、涙で発声が崩れてしまったりして、その度に音楽と演技のバランスを取ることにとても苦労しました。音楽に集中している中でも、冷静に俯瞰しコントロールできる自分を持つことは今後も私にとって大きな課題であると痛感しました。

音楽面からも演技面からも、それぞれの課題に沿って先生方がご指導くださるので、稽古を重ねるうちに少しずつ変化し成長していくことができていることを実感できます。同じクラスの研修生の演奏を聴講している中でも、先生方のアドバイスでどんどん良くなる姿をみて本当に素晴らしい環境で勉強させていただけてるのだなと改めて思います。互いの成長を喜び、刺激を与えあえる研修生同士の関係もとても心強いです。

現在は前期の試演会を終え、修了演奏に向けての音楽稽古が始まっています。本科で過ごす残り少ない時間も、最大限に吸収し、成長できるように引き続き精進してまいりたいと思います。

村田 涼(むらた りょう)
第68期本科(宮本益光クラス)

本科の前期後半は、ベルカント作品を課題として研修にあたりました。
夜クラスで取り上げられた作品は、ベッリーニ作曲の『カプレーティ家とモンテッキ家』、ドニゼッティ作曲の『ドン・パスクワーレ』、『ランメルモールのルチア』、『愛の妙薬』、『リタ』、ロッシーニ作曲の『チェネレントラ』などの演目です。私は、『ランメルモールのルチア』より、ルチアとエドガルドの二重唱に取り組みました。ルチアはいつかレパートリーにしたいと思っていた役の一つでしたので、課題が決まった当初からとても楽しみでした。

ルチアは、一族の仇であるレーヴェンスウッド家のエドガルドと愛し合っていますが、家と財産を守りたい兄エンリーコの計略によって引き裂かれてしまい、別の男性と結婚させられた挙句、発狂して死んでしまいます。今回私が取り組んだのは、エドガルドが祖国スコットランドを離れフランスへ行くことを告げに来るシーンです。エドガルドが父親を殺され一族を破滅させたアシュトン家への憎しみを歌い、ルチアは激しく動揺しますが、二人は指輪を交換し、結婚を誓い合います。

ベルカント作品を歌うにあたっては、いかに美しく歌うかが特に重要な要素となりますが、この曲は旋律が美しく滑らかに歌いたい箇所が多いながらも、感情の動きが激しく、テクニック面と表現面の両方において大変勉強になりました。
まず音楽稽古では、無理のない発声と正確さを徹底すること、また、音の凹凸をなるべく感じさせず、全ての音が一本の線でつながっているような歌唱を目指し、指導していただきました。音の跳躍なども多くかなり苦戦しましたが、先生方の丁寧で的確なご指導により、技術面で向上することができたと思っています。
次に立ち稽古では、動きだけでなく呼吸で感情と感情をつなぐことや、感情が変わるきっかけが何なのか、その瞬間の驚きやショックを明確に意識することが、いかに大切か学ばせていただきました。このシーンはルチアの感情が本当に目まぐるしく変わりますが、ご指導のおかげで、自分自身も迷いなく演技できるようになった気がします。
また、授業では自分が歌っている時間は勿論ですが、他の研修生が歌い指導されているのを見ている時間が、自分の成長に繋がっていると感じます。毎回の講義を客観的にみていると、各自が課題曲に対して工夫している点が分かり、それに対する先生方のご指摘やアドバイスによって、その場での変化だけでなく、講義を重ねることで曲の理解や表現が磨かれていく様子も分かり、集中していると自分が何曲もの課題曲を並行してこなしているような感覚になります。

後期はグノー作曲の『ロメオとジュリエット』より、4幕冒頭のロメオとジュリエットの二重唱を勉強する予定です。ベルカント作品の期間に学んだことを活かして、自分の課題曲への取り組みは勿論、他の研修生への指導も最大限に取り入れていけるよう、後期も精進したいと思います。

↑ページの先頭へ

オペラ歌手育成支援

―― 世界で活躍する声楽家を育成するため皆様からのご支援をお願いいたします。

■オペラ歌手育成会〈年会員〉
 一口 個人10万円 法人20万円
・利用目的:研修生奨学金への充当、研修所運営費への充当

・御礼内容: 二期会オペラ研修所コンサート、二期会新進声楽家コンサートへのご案内
二期会オペラ研修所コンサート、二期会オペラ研修所修了試演会 各プログラムへのご芳名の掲載、ホームページへのご芳名の掲載

■ヤング・シンガーズ・サポート〈オペラ歌手育成寄付〉
 一口1,000円・3口以上
・利用目的:研修生奨学金への充当、研修所運営費への充当
・御礼内容:二期会オペラ研修所コンサート、二期会オペラ研修所修了試演会
      各プログラムへのご芳名の掲載(1万円以上ご寄付の方)
      ホームページへのご芳名の掲載(1万円以上ご寄付の方)

▼「オペラ歌手育成支援」に関する詳しいご案内とお申込方法はこちらをご覧ください
【基金・ご支援ガイドブック】
 ご支援はインターネットからのクレジットカード払いでもご寄付いただけます

▼東京二期会では上記の他にもさまざまな事業目的に対するご支援をお願いしております
 詳しくはこちらをご覧ください
東京二期会へご支援のお願い

 公益財団東京二期会へのご寄付は、ご寄付に対する税制上の優遇措置が受けられます

↑ページの先頭へ