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オペラを楽しむ

上演目前! 堀内修さんが伝授する もっと『パルジファル』を味わうための3つのヒント いよいよ7月に上演が迫る、宮本亞門演出『パルジファル』。“初ワーグナー”の方にも、事前にチェックしておけば「さらに楽しめること間違いなし」のアイテムを、音楽評論家の堀内修さんに教えていただきました。

文/堀内修

“見ればわかる”“聴けばわかる”ドイツ語だって“字幕を読めばわかる”。だから東京二期会の『パルジファル』を味わうにはまっすぐ劇場に行けばいい……のは確かなのだけれど、心細い人は何か手許に事前ツールを用意したくなるもの。

そこでまずは「案内書」だ。日本ワーグナー協会監修の優れた解説書『パルジファル』が白水社から発売されている。ページを開くと対訳と音楽解説、テクスト解説がまとめられている、とは言ってもわかり易いわけじゃないからこれから劇場で聴こうという人が読み通すのは難しい。だが持っていれば安心できる。ほんの数ページでも読めばもっと安心できる。そして自分はこれから「聖なる祝祭劇」に立ち合うのだぞ、と期待が高まってくるはずだ。

「聴いておく」ならカラヤン指揮の全曲盤CDがいい。これも耳を澄まして全曲聴き通すより、美しい響きに慣れる程度で十分ではないだろうか。ドビュッシーは劇場で聴いてあまりの美しさに仰天したけれど、音楽家じゃない人がいきなり聴くのは効き目が強過ぎる。ワーグナーが到達した至福の響きに、カラヤン指揮のこの上なく美しい演奏で耳を慣らしておいたほうが安心だろう。

現在のワーグナー上演は演劇的になり、さまざまな解釈が施されるのが楽しみなので、前もって映像で見るのは弊害もある。それでも少し見ておきたいという人は、バイロイトでなくメトロポリタン歌劇場の、少し前のレヴァイン指揮のものなら間違いない。以前はこういう上演だったと知れば、これから見るのに役に立つ。なんといっても「未来の芸術」は劇場で、昨日ではなく明日味わうものなのだから。

堀内修
Osamu Horiuchi

音楽評論家。1949年東京生まれ。ウィーン大学への留学などを経て、1970年代からオペラを中心としたクラシック音楽の評論を新聞・雑誌で発表。テレビやFM放送でも活躍するベテラン評論家。ワーグナー関係の著書に『ワーグナー』(講談社新書)、『ワーグナーへの旅』(新潮社とんぼの本)、『ワーグナーのすべて』(平凡社新書)等がある。

ワーグナー『パルジファル』

オペラ全3幕
日本語及び英語字幕付原語(ドイツ語)上演
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ
演出:宮本亞門 合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団
東京文化会館 大ホール

2022年7月 13日(水)17:00
14日(木)14:00
16日(土)14:00
17日(日)14:00