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オペラを楽しむ

世界に羽ばたいた二期会のオペラ 清水脩作曲『聟選び』(1968年)

二期会初の海外公演、清水脩『聟選び』より(指揮:ヤン・ポッパー、演出:長沼廣光)。右から小田清、伊藤京子、栗林義信、平野忠彦、中村健、丹羽勝海 。昭和43年10月3日〜10日、アメリカのリバーサイド、バークレイ、デーヴィス、サンタ・モニカ、サン・ディエゴで上演。

平成2年、フィンランドで行われた、サヴォンリンナ・オペラフェスティバルで上演されたプッチーニ『お蝶夫人』(1904年ミラノ初演版に基づく新演出)より。指揮は大野和士、演出は三谷礼二が担当。上段左/お蝶夫人役の島崎智子と、シャープレス役の多田羅迪夫。上段右/現地新聞で絶賛されたスズキ役の伊原直子

 二期会は1968(昭和43)年、初の海外公演を実現、創立から実に16年の時を経たアメリカ公演でした。演目は「日本の創作オペラの父」「日本合唱音楽の父」とも称される清水脩作曲『聟選び』。清水氏がアメリカから作曲の委嘱を受け、カリフォルニア大学の音楽学部長も務めたチェコ出身のヤン・ポッパーという人物が実現に尽力、ヤンはアメリカ公演の際、指揮を務めています。作品は民話「芋掘り長者」などから想を得て、全く新しい日本のオペラとなりました。

 当時は、1ドル360円の時代。公演に当たりソリストは7人、オーケストラも小編成、日本語上演でした。

 キャストに目を向けると、主役の朝日長者役はバリトン小田清が務めています。小田は昨年11月『メリー・ウィドー』でミルコ・ツェータ男爵役を務めたバス・バリトン三戸大久の恩師。三戸は二期会のブログ『オペラの散歩道』で「小田先生の得意だったツェータ男爵を演じられてうれしい」と語っています。

 また、團伊玖磨『夕鶴』のつうが当たり役で、北京公演で絶賛されたソプラノ伊藤京子、UCLA大学院、ジュリアード音楽院に留学し、ヤン・ポッパーにも師事したテノール丹羽勝海、アニメ「ジャングル大帝」のテーマ歌唱や、NHK大河ドラマ「義経」平盛国役で俳優としても活躍したバリトン平野忠彦なども出演しています。

 その後二期会は、平成が幕を明けた1990(平成2)年、世界的に有名なフィンランド・サヴォンリンナ・オペラフェスティバルに招聘、オペラ『お蝶夫人』『春琴抄』を上演しました。歌手約80名を含む二期会関係者137名、楽団などを合わせると総勢261名を引き連れての渡航となり、日本音楽界においてこれほど大規模な渡欧公演は初めて。また名称も「東京二期会オペラ劇場」としました。「独唱者の水準も高く、聴く者の魂をイタリアの旋律に溶け込ませることが容易な演奏」と地元の新聞にも取り上げられ、二期会のオペラはこれを機に、ヨーロッパをはじめとする世界へと発信していくことになりました。

参考文献:音楽之友社『音楽芸術』(1968年12月号) 文/田中晃