美声を
成田博之さんといえば、オペラ歌手の中では知る人ぞ知るクルマ好きである。ただし、彼が愛車を颯爽とかっ飛ばしているシーンに出くわしたことのある人は、それほど多くはないかもしれない。実際、今回の取材にも彼は愛車で登場はしなかった。「クルマ好き」というと感じる派手でやんちゃなイメージからは距離があるのだ、成田さんは。その理由は、彼がクルマについて語り始めるとすぐにわかった。「クルマはもちろん移動する手段ですが、ただ移動できればいいというわけじゃない。自分とクルマだけの空間に存分に浸りきる。人生で最高にリラックスできる時間です。その時間と空間を大事にしたい。だから、自分が惚れたクルマに乗りたいんです。」 |
満開に咲き乱れるコスモスの姿に、思わずカメラを構える成田さん |
愛車を走らせ、自然風景を撮影に出かけた後は、カフェなどでゆったりとした時間を過ごすことも。 |
愛車のことを「いい相棒」と語る成田さんには、もうひとつ、なくてはならない相棒がいる。それがカメラだ。成田さんのブログには、自身で撮った写真がたくさん掲載されているが、その玄人はだしの腕前に驚いている人も多いのではないか。彼が特に好きなのが、花の写真を撮ることだという。薔薇の写真を何枚か見せてもらった。何だろうこれは…普通の写真と何かが違う。清楚というか、透明感というか、まるで薔薇がこちらに何か語りかけてきているような…。
「花1本1本に『個』があるんです。その『個』をみつけてあげて、それをどうやって引き出してあげるか、を考えるのがすごく面白い。その花のここがキレイだから撮ってあげよう、って思いながらシャッターを切ります。もしかすると、花の方も『ここを撮って』って言っているのかもしれない。」
なるほど、この写真は薔薇からの成田さんへの告白なのだ。さすが伊達男役の似合うバリトン歌手、花さえも魅了してしまう。
花だけではなく、風景や人間を撮った写真にも同じ感性が宿っている。今しか出会えない風景、その瞬間にしかみせない顔。写真とは、無駄なものを切り取って光り輝くものを選び出す作業だ。それはオペラの舞台にも活かされている。舞台という大きなフレームの中で、自分がどう動くべきなのか、どうみせればいちばん効果的か、そんなことを考えられるようになったのは、小さい頃からファインダーをのぞくのが好きだったおかげだ、と成田さんはいう。オペラ歌手成田博之が自分というファインダーを通して切り取った「光り輝く瞬間」を、これからもずっと客席から見続けていたい。
成田博之(なりた ひろゆき) バリトン 宮城県出身。繊細な性格描写と多彩な表現力で注目のバリトン。文化庁派遣芸術家在外研修員としてイタリア・ボローニャにてパオロ・コーニ氏に師事。03年アテネ開催「国際ミトロプーロス声楽コンクール」で最高位入賞(順位なし)他、受賞多数。近年では、2003年日生劇場開場40周年記念、ベルク『ルル』(3幕版/日本初演)、サントリーホール『トスカ』(2004年)『ラ・ボエーム』(2005年)、2009年夏、佐渡裕プロデュースオペラ『カルメン』エスカミーリォ、二期会『ラ・ボエーム』マルチェッロ、『カプリッチョ』伯爵等、目覚ましい活躍である。2014年2月『ドン・カルロ』ロドリーゴが期待される。「The JADE(ザ・ジェイド)」メンバー。 |
天体写真にもはまっているという成田さんは、昨年5月21日の金環食も、こんなにプロのように撮っていた。 |
移動する飛行機の中から、雲間に頭を突き出す「富士山」をパチリ。地方公演もカメラと一緒だとか。 |
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東京都港区南青山4-21-26 2013年8月30日にオープンした「INTERSECT BY LEXUS TOKYO」は、レクサスの考えるライフスタイルを体験できるグローバル規模のブランド活動発信拠点。1Fは、ノルウェー発の老舗「FUGLEN」のコーヒーバーや、レクサスのコンセプトモデルを設置したガレージがあり、2Fでは、食事をいただくこともできるライブラリーラウンジとなっている。インテリアデザイナー片山正通氏(Wonderwall Inc.代表)によるレクサスのファサードやカーパーツを使った内装もみどころの一つ。 |
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