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二期会創立60周年記念
「ガラ・コンサート」

文・室田 尚子

 二期会は来年4月、創立60周年を記念して、ガラ・コンサートを行なう。ガラ・コンサートとはもともと、「正装コンサート」の意味で、何かを記念して行なわれる特別な演奏会のことをいう。ちなみに「ガラ」の語源は洋服のひだつきのふち飾りのことで、男性が燕尾服やタキシードの中に着るドレスシャツのフリルの前立てを思っていただければいい。なるほど、こうした服装は正装が指定されている場でなければお目にかかれない。ただ、日本でガラ・コンサートといった場合、必ずしも正装がドレスコードに指定されているとは限らず、「祝賀演奏会」「特別演奏会」に対してこの名称が用いられていることが多いように思われる。もちろんその内容は、祝賀にふさわしく、ソリストの演奏を中心に組み立てられていることが多く、全体的に華やかで美しい曲が登場するのが特徴だ。

2003年二期会創立50周年記念公演『ばらの騎士』演出:ギュンター・クレーマー

 今回のコンサートは、手元にある予定プログラムによると、二期会を代表する歌手たちが次から次へと登場し、得意な曲目、60周年祝賀にふさわしい曲目を披露していく。全体は2部に分かれ、1部はこれまで二期会が上演したオペラの演目から、特に近年力をいれているドイツ・オペラ中心のプログラム。『ローエングリン』第3幕への前奏曲で幕が開き、『ドン・ジョヴァンニ』『フィガロの結婚』『コジ・ファン・トゥッテ』『魔笛』、『ナクソス島のアリアドネ』『ばらの騎士』といったドイツ・オーストリアの演目が並ぶ。

1952年二期会旗揚げ公演『ラ・ボエーム』

1991年栗林義信演じる『リゴレット』

 

 休憩をはさんだ2部は二期会にとって特別な歌手と曲目が登場する。伊原直子と栗林義信が『カルメン』の「ハバネラ」と『リゴレット』の「悪魔め、鬼め」を歌うのは、二期会をずっと観続けてきたファンにとってはこの上ない喜びだ。また旗揚げ公演で上演されたプッチーニ『ラ・ボエーム』を、今をときめくトップ歌手たちが歌うのも、二期会の歴史を感じさせる。そして最後は古くからの二期会ファンには特に嬉しい日本語によるレハール『メリー・ウィドー』からのナンバーで華やかにしめくくられる。

1992年伊原直子演じる『カルメン』

 声楽界の第二期を担うとの自負のもとに結成して以来、60周年という節目の年のコンサートは、先達による偉業と伝統を継承しながら、さらにそれに新しい光を当てつつ未来へと続いていくことを強く感じさせる演奏会となるだろう。新国立劇場オープン後のオペラ界の構造的変化や海外歌劇場の引っ越し公演が日常化した今日でも、二期会歌手が、日本の声楽界の根幹をなしている事実に変わりがない。その歌手たちから、現時点で考え得る最高のメンバーが揃う。そして何よりも、「お客様と共に歩んで来た二期会」という視点が盛り込まれているのが二期会らしい。オペラの舞台をつくりあげるのは、キャストやスタッフだけでなくお客様がいてこそ、という強いメッセージが、このガラ・コンサートのプログラムから感じることができるのだ。
 今回のガラ・コンサートを聴くということは、単にお祭りムードの演奏会を聴きにいくというだけではない。私たち観客も、共に二期会オペラの舞台をつくってきたひとりとして、二期会の60周年を祝い、さらなる発展へのエールを贈るという意味が少なからずあるように思う。さあ、共に祝い、喜び、そして未来への一歩を記すために、創立60周年記念「ガラ・コンサート」に足を運んでみようではないか


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