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オペラを楽しむ

『メリー・ウィドー』を観て

山本益博

 オペラでなくオペレッタを観るとき、いつも気になることがある。字幕である。歌詞ならばいいが、台詞は字幕ではどうしても存分に楽しめない。いつも舞台の会話から一拍遅れたり、ときに一足お先にしゃれ言葉がフライングしてしまうからである。
 今回の『メリー・ウィドー』、台詞は日本語、歌は原語だったから、会話のストレスがなく、それが歌手陣にも余裕を持たせて、とても楽しい舞台だった。これが第一の殊勲。
 次は、指揮の下野竜也。流麗な棒から紡ぎだす音楽は、大人の甘酸っぱい恋愛劇にまことに相応しいものだった。心の琴線に触れるメロディーを、感傷的になりすぎずに聴かせてくれた。ブラボー、マエストロ!
 そんな素敵な演奏に支えられたら、舞台の歌手が乗らないわけがない。とりわけ、ハンナ(澤畑恵美)とダニロ(星野淳)の主役二人の歌と芝居は、切なく、それでいて少年少女のピュアなハートに溢れたものだった。


2010年二期会公演『メリー・ウィドー』第3幕
<復活愛>を成就させたダニロ(星野 淳)とハンナ(澤畑恵美) 撮影: 鍔山英次


2010年二期会公演『メリー・ウィドー』第3幕
マキシムの踊り子たち(6名の声楽家が2組)が大活躍 
撮影: 三枝近志

公演批評より

 「二期会の『メリー・ウィドー』は今回が9回目となる。恒例の日本語上演に芸達者が集まった。演出は前回と同じ長く東宝ミュージカル他でも話題の舞台を提供してきた山田和也で、瞳の中にいくつも星が光るようなアニメを思わせるセット(装置:堀尾幸男)が、日生劇場という独特な雰囲気の空間に似合っていた。聴衆も日本語上演を楽しむ術を熟知していて、男性7名のラインダンスにも拍手喝采が起こる。セリフでのやりとりも多いオペレッタでは、作品の持つ親しみやすさを活かす点でも日本語上演が続けられる意味は大きいと思う。(中略)下野竜也の指揮は、自分の音楽の主張よりは歌手たちに丁寧に沿う姿勢に徹したもの。これだけの芸達者がそろえば、ここは役者に任せる彼の姿勢が正しいと感じた。」河野典子
「音楽の友」誌2011年1月号より

「『こうもり』と並ぶオペレッタの傑作、フランツ・レハール作曲『メリー・ウィドー』を二期会が上演した。(中略)ワルツはもう少し酔わせて欲しい気がした。ミュージカルから時代劇までマルチにこなす山田和也の演出は二〇〇五年に彼が作った舞台とほぼ同じ。モネの睡蓮を思わせる紗幕や白を主体としたドレスなど全体をシックな色調で品よく仕上げ、後半の「マーチ」「カンカン」では手拍子の連続で客席を沸かせた。オペレッタはやはり楽しい。以前に見た『ジプシー男爵』など今後もぜひ上演していただきたい。」永井宏子
「オン★ステージ新聞」2010年12月10日号より



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