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オペラを楽しむ

「オペラの楽しみ」 室田尚子

第15回「オペラをもっと楽しむために・その2」


 「オペラをもっと楽しむために」、前回は事前の「予習」の方法についてご紹介しました。今回は、舞台を観終わったあとの「復習」についてです。実は個人的には、「オペラ好き」になるためにもっとも重要なのはこの「復習」だと思っています。というか、実際の舞台を観て大感動、家に帰っても興奮冷めやらぬ時に「ああ、このオペラについてもっと知りたい!」と思ったなら、それはすでに「オペラ好き」の道を一歩踏み出したも同然(これが高じると「オペラオタク」への道まっしぐら、ですが)。では、その道ではどんなアイテムを手に入れることができるのか、探してみることにしましょう。


1.別のメディアで楽しむ

 オペラに限らず、ミュージカルでもお芝居でも、およそ舞台芸術と名のつくものはすべからく、「生の舞台を観る」ことにまさる体験がないのは当然ですが、かといって、毎日舞台に通い詰めるのはムリ。でも、もっとあの感動を味わいたい!という場合に有効なのが、映像で楽しむ方法です。これは、予習の時にも使用しましたが、もちろん復習においても最強のアイテム。幸い、昔と違ってDVDはずっと安価になって簡単に手に入りますし、また最近ではブルーレイなどのより高画質・高音質なメディアもありますから、舞台の臨場感を楽しむことが可能です。
 とはいっても、記録映像はやはり記録映像。本物の舞台を体験した後では、物足りなさを感じてしまうことも。そこでオススメしたいのが、オペラを題材にした映画です。これは、初めから「映画作品」としてつくられたものなので、映画としての完成度や芸術性も高く、舞台とはまた違う別の「作品」として、オペラのもつ世界を広げてくれます。1978年ジョゼフ・ロージー監督の『ドン・ジョヴァンニ』は、ヴェネツィアの歴史的建造物を舞台にした映像美が一見の価値あり。最近ではアンナ・ネトレプコがミミを演じた2008年の『ラ・ボエーム』も評判になりました。

ラ・ボエーム デラックス版 ¥6,090
発売元:スターサンズ/ミッドシップ
販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント




2.原作を楽しむ

 オペラには、台本からオリジナルでつくったものだけでなく、原作をもつ作品も少なくありません。たとえばヴェルディの『オテロ』は、言わずと知れたシェイクスピアの戯曲『オセロウ』を原作としています(ちなみにヴェルディのシェイクスピアを原作としたオペラには、他に『マクベス』や『ファルスタッフ』があります)。こうした原作を読んでみることも、オペラ好きにはたまらない面白さなのです。
 同じヴェルディの『ラ・トラヴィアータ』は、アレクサンドル・デュマ・フィスの小説『椿姫』をもとにしていますが、原作とオペラでは登場人物の名前も異なりますし、ストーリーや場面もかなり変更されています。こうした原作とオペラとの「読み比べ」はなかなか楽しいものがありますし、また、「なぜ変更が行われたのか」を考えることは、オペラの世界をより深く知ることに繋がっていきます。本当は、両方とも原語で読めればいいのでしょうが(シェイクスピアなどは、英語ならではの言葉づかいなどが満載ですし)、まあ、そこはそれほど堅苦しく考えず、翻訳でじっくり楽しんでみてはいかがでしょう。

東京二期会オペラ劇場
『ラ・トラヴィアータ』 
2009年2月東京文化会館 
左:樋口達哉(アルフレード) 
右:澤畑恵美(ヴィオレッタ) 
撮影:鍔山英次

  • 左:「オセロウ」シェイクスピア
    菅 泰男 訳 ¥588 岩波書店
  • 右:「椿姫」デュマ・フィス
    新庄嘉章 訳 ¥620 新潮文庫