TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

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オペラを楽しむ

私とオペラ
クリス松村

クラシックにオペラ、幼少時代から私が最も嫌っていた響きの言葉です。なぜなら、大嫌いな家庭の雰囲気は朝からこの音楽が流れていたから。私が歌謡曲やニュー・ミュージック、ポップスを聴いていようものなら、父は「こんな流行歌」と言葉を吐き捨て、それを全否定しました。

しかし、2000年という新しい時代になり、このトラウマのような音楽の壁が取り払われたのです。それは「クラシカル・クロスオーヴァー」と言われる新ジャンルの出現。ジョシュ・グローバンにはじまりイル・ディーヴォを追っかけるぐらい虜になりました。ここには、クラシック、オペラとポップスの融合があったわけです。

よくよく考えてみれば、好みのオペラというものは歌唱として、常に近くにありました。人生で最初に映画館で見た映画は…ロンドンで見たミュージカル映画「オリバー!」でした。このサウンドトラック盤は、レコードがすりきれるほど聴きましたが、〈ボーイ・フォー・セール〉という歌がオペラ歌唱を好きになったはじまり。そうたどっていけば…最初に好きになったオペラ歌手は、マリオ・ランツァなのかなと思います。「ニューオリンズの美女」の中での〈ビー・マイ・ラヴ〉の歌唱は感動した1曲です。最初に知ったのは「ザッツ・エンターテイメント」で、キャスリン・グレイソンの歌唱にわって入るマリオの歌声は衝撃的な素晴らしさでした。この曲は最近でもラジオでソロ・ヴァージョンをオンエアするぐらいお気に入りですが、マリオ・ランツァまでいけば、オペラやクラシカル・クロスオーヴァー、そして特にテノール歌手たちに夢中になる要因が自分でも理解出来ます。なかなかとっつきにくいと言われるオペラへの入り方は、ミュージカル映画だったり、ポップスとの融合だったりするわけです。つまり、オペラを聴け!というところから入ってはいないというのが私の聴き方の特徴。とはいえ、幼少時代のトラウマを除けば、結局、オペラは嫌いではないわけです。

話が前後しますが、オペラ歌手の公演として、最初に行ったのは、1991年11月の3大テノール公演でした。パヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスの揃ったこの公演は、大変貴重なものでした。なぜなら大好きなルチアノ・パヴァロッティを生で見た最初で最後の公演だったからです。そう、同じテノールでも全然違うことをあらためて気がつかせてくれた公演でもありました。ドミンゴはその後カレーラスとともに、ダイアナ・ロスとも1999年の福岡ドーム公演まで3度公演をしています。こちらは全公演行きましたが、私のクラシック、オペラへの回帰は常に気がつかないうちにされていたことになります。

しかし、一つ気がついたこと…それは、オペラではなぜか男性歌手ばかりを好んで聴いているということ。この理由はわかりません。しかし、新しく生まれる音楽を聴きながらも年々、オペラの歌唱を求めている気がします。最初に大嫌いな家庭の雰囲気と書きましたが…結局はその嫌いだったはずのものが本当は素晴らしいと知っていたんですね…。オペラは自然な形で聴きたいものです。

クリス松村(くりす まつむら)

オランダの政治都市ハーグで誕生。学生時代に世界各国をまわる。邦楽、洋楽問わずの音楽好きが高じて、番組出演にとどまらず、テレビやラジオの番組監修、CDの音楽解説なども手掛ける。自身がDJを務める3つのラジオ番組の構成はすべて自ら行う。数多くの大物アーティストから認められるほど音楽に造詣が深い。著書に『誰にも書けないアイドル論』。