TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

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オペラを楽しむ

私とオペラ
大和悠河

宝塚歌劇団に入りたい! そう思って夢に向かって走り始めたのが小学生の時でした。15歳で宝塚音楽学校入学、17歳で初舞台、夢が叶ってトップスターとして卒業するまで、宝塚の舞台の男役の美学だけを考えて生きてきました。

そんな時、マリア・カラスのアリアを聴いて、「ここに舞台の全てがある!!」とオペラに目覚めてしまいました。

歌劇団在団中の詰まり切った予定の中でも、5~6日あったらヨーロッパなどに行っていました。卒業してからも、合間ができたら、海外でその時オペラをやっている劇場に飛んでいったり、レッスンを受けたりするうちに、オペラと私は切っても切り離せないものになりました。ベルカントとアクートの世界に、ただ圧倒されました。

普段私が立つ舞台はマイクがあるのがあたりまえの世界で、私にとって「普通に演じる」ということは、「男役で演じる」ことでした。そういう舞台で生きつづけていた私にとって特に今まで夏になるとたびたび訪れたアレーナ・ディ・ヴェローナは、格別な世界でした。缶がひとつ転がってもコロンコロンと劇場全体にその音が共鳴して星空がそのまま天井となるような舞台で、マイクを通さない、生の声が響き渡るオペラの世界。そこは、普段私が出ている舞台とは違う世界なのです。

宝塚を卒業した後、女優として、女性として舞台に立つことは決して簡単なことではありませんでした。オペラを勉強するということは、私を本来の姿へとリセットし、女優の世界へと向かうスタート地点に立たせてくれるものだったのです。ミュージカルや、ストレートプレイを演じる場合でも、『椿姫』等のアリアで発声練習をしています。そうすると私の性が女性になるのです。一つの役から別の役へ向かう時、この別世界に身を置きオペラに触れることで、男役から女性としての自分自身へと、原点に帰ることができます。

昨年は、ブロードウェイ・ミュージカル「CHICAGO」の主演ロキシー・ハートとしてニューヨーク・リンカーンセンターの舞台に立たせていただきました。NYのオペラの殿堂のリンカーンセンターで、宝塚歌劇の男役とは真逆のロキシー・ハートという役をやらせていただけたことはとても嬉しいことでした。

そして昨年はさらに、オペラを基にしたコンサートやディナーショーも、私が演出してオペラを歌いました。ファンの方々も、オペラが好きになっていく様子を見て、とても嬉しく思っています。

マリア・カラスと出会って、私の中で何かが弾け、どんどんふくらんで、女優としてあんな表現ができたらといつも思っています。歌劇〈オペラ〉は、私の人生の原点なんです。

大和悠河(やまと ゆうが)

女優。宝塚歌劇団元宙組トップスター。天性の華やかさと抜群のスター性で人気を集める。宝塚歌劇団卒業後はNYリンカーンセンターでのブロードウェイ・ミュージカル『CHICAGO』主演ロキシー等、数々の主演・ヒロインを務めている。オペラにも造詣が深く、「YUGA OPERA CAHIER」を開催。テレビ出演、出版メディア等でも活躍。今年4月には、宝塚を超えた男役の美学で魅せるタキシード仮面役で米・ヒューストンのコンベンション出演。著書に『オペラとお菓子の旅~愛のヒロインを生きて~ オペラに魅せられて』(中央公論新社)他。大和悠河1stアルバム『ELOISE』好評発売中 新曲「宝石の時間」(ユニバーサルミュージック)