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オペラを楽しむ

私とオペラ
假屋崎 省吾

 小さい頃からヴァイオリンを習っていました。発表会ではピアノの伴奏にあわせてヴァイオリンを弾きます。何度も聴いているうちに「ピアノって素敵だな」と思うようになり、中学生からピアノを習い始めました。ちょうどその頃、リスト全集を世界で初めて完成させたピアニスト フランス・クリダのLPが発売され、それをすべて購入し毎日聴きました。その中にオペラの曲のパラフレーズが入っていて、例えば『リゴレット』パラフレーズを聴いているうちに、「あぁ、原曲はどういうものなのだろう」と、ピアノの曲からオペラにすごく興味を抱くようになりました。もちろん小学校の音楽の授業で、オペラの曲を聴く機会はありましたが、実はあまり記憶に残っていません。オーケストラで演奏したものより、人間が歌っているものよりも、ピアノで奏でられたオペラの曲のほうが、スッと心の中に入ってきたのを覚えています。それが私とオペラの出会いです。それからいろいろなものをたくさん観させていただくようになり、こんなに夢のような世界に浸れるジャンルというのは、なかなかほかにはないと思います。
 最近ではミュンヘンのバイエルン州立歌劇場で音楽総監督を務めるケント・ナガノさんの公演を三日間連続でご招待いただきました。初日はモーツァルトの『後宮からの逃走』、これはもう演出がものすごく面白かったです。二日目がバレエ。曲はピアニスト、児玉桃さん演奏のラヴェルの「左手のためのピアノ協奏曲」などでした。三日目はワーグナーの『ローエングリン』。この演出もまたとても面白かった。しかも席が左手の二階のボックス席というケント・ナガノさんご自身のお席でしたり、ルートヴィッヒ二世が座ったという舞台真正面のすばらしいお席でしたり……。公演が終わった後も楽屋に呼んでいただき、さらにご自宅にまでご招待いただきました。白ソーセージとザワークラウト、そしてドリンクをいただいて、ホントにもう夢見心地のミュンヘンの出来事でした。これもすべてオペラという不思議な魅力のある音楽に出会えたおかげです。
 私は美を提供する側なので、美しいものを見たり体験して「美を仕入れる」ということを常々意識しています。提供するばかりでは枯渇してしまいますので。その中でもオペラというものは、自分にとってはとても贅沢なことではありますが、どっぷりとその世界に浸れる時間を大切にしています。それがまた明日への活力、創作意欲に繋がり、いろんな仕事に結び付きます。

假屋崎 省吾(かりやざき・しょうご)
華道家。假屋崎省吾 花・ブーケ教室主宰。
美輪明宏氏より「美をつむぎ出す手を持つ人」と評され、繊細かつ大胆な作風と独特の色彩感覚には定評がある。
目黒雅叙園百段階段での個展「華道家 假屋崎省吾の世界 ~華ルネッサンス~」は11月1日から11月18日まで開催決定。
現在、テレビ・雑誌など幅広い分野で活躍中
假屋崎省吾 花・ブーケ教室 http://www.kariyazaki.jp/


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