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オペラを楽しむ

私とオペラ
永井 美奈子

 私とオペラの関係は、実はあまり褒められたものではありません。
 そもそもオペラと出会ったのは中学生の頃。ピアノの先生のおかげでした。先生は二期会所属の声楽家。ある日、練習不足の私に愛想を尽かすこともなく、何とも寛大に「じゃあ今日はオペラでも行きましょうか」と誘って下さいました。それは今まで見たこともない非日常。こんな世界があったのか!と夢のようでした。とても褒められた生徒ではない私にこんな素晴らしい機会を下さった先生には心から感謝しています。
 主人と結婚したきっかけもオペラでした。これだけ話すと大抵の人は「まあ、なんてロマンチックな」とおっしゃいますが、実はこれもあまり褒められた話ではありません。
 独身時代、オペラも含め兎に角舞台好きだった私は、週に2〜3回は劇場に足を運んでいました。大抵一緒に行くのはアナウンサー仲間の八塩圭子さん。週に何度も一緒なので、周囲から「二人は付き合っているらしい」とまで噂されたほど。ところが、彼女と予定が合わないと「ひとりオペラ」という事もままありました。私は全く平気だったのですが、それを見た友人から「独身女30代、一人で劇場に行くのは寂しすぎる」とありがたいご忠告を頂いておりました。
 そんな時、フィリッパ・ジョルダーノのコンサートの幕間で、偶然顔見知りの主人と会ったのです。コンサートがあまりにも素晴らしかったので、その勢いでディナーへと繰り出すことに。そこで、彼がオペラ好きだという事が判明。オペラの話ですっかり盛り上がり、「今度ご一緒しましょう」と誘いをうけました。ただの社交辞令だったのかもしれませんが、私としてはまさに渡りに船。
 丁度スカラ座が来る時期でしたが、八塩さんとは予定を合わせられず苦労していました。
 しめしめ、これで「ひとりオペラ」をしなくて済む!と思い、「チケット代は自分で払うので一緒に行きませんか?」と誘ってみたのでした。独身女がなんとも色気のない誘い方ですが、それがきっかけで結婚しました。瓢箪から駒みたいな話です。
 それ以来よく夫婦でオペラに行きますが、主人の仕事が忙しいと未だにひとりオペラになる事もあります。結局結婚しても「ひとりオペラ」は続いていますが、周りに何と言われようと今は全く気になりません。もしかして私「おひとりさま」が好きなのかも。
永井 美奈子 (ながい・みなこ)
日本テレビアナウンサーを経てフリーに。
退社後は、政界、財界、スポーツ選手、芸能人100人に取材をするなど、インタビュアーとしても活躍。
慶応義塾大学研究員。成城大学非常勤講師。二児の母。
現在、司会や講演会での活動の他、「心のとしょかんプロジェクト」のサポーターとして、3.11の被災地を訪れ支援活動を行っている。
http://ja-jp.facebook.com/kokoronotoshokan


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