TOKYO niki kai OPERA FOUNDATION NEW STYLE OPERA MAGAZINE

ENGLISH

オペラを楽しむ

オペラって…
「オペラへの声援」
篠井英介


 自分の仕事が世の中とどう関わっているのか。世のお役に立っているのか、時々思うようにしています。もちろん、演劇なんて空腹を満たし、寒さを防ぐわけでもなし、と嘆息するのですが。

 これは私が現代劇の世界で女方であろうとしていることと関わっています。

 女優さんがたくさんいるのに、その中で女性の役をやらせて頂ける自分でいなくちゃいけないのです。それはなかなか大変なんですが、自分の決めた仕事なので奮闘しています。

 芸術が衣食住には関係がなくて、あってもなくてもいいんだけど……でもあった方がね、と認識した上で励むこと。そうすると逆説的にもうひと踏ん張り出来たりするのです。

 生産性やら需要と供給やらと最も縁遠い芸術、芸能だからこそ真剣にやって平和でゆとりある今現在のお役に立たなくちゃと覚悟するわけです。

 オペラは間違いなく舞台芸術の華です。

 愛好家ではない私でさえ名曲、名場面をめくるめく思いで心に浮かべることができます。演劇の集大成としてのオペラを私自身がもっと知り、魅惑されたいと思っています。

 知と贅を尽くし時間を費やし、多くのスタッフ・キャストの集結した舞台はほんの数回、あるいはたった一回の公演のためであるし、その一刻のために劇場まで足を運び、安くはない代価を支払う。合理性、経済性とはかけ離れたオペラ公演だからこそ人は引き付けられるのかもしれません。平たく言えば創り手も、観客も気迫、心意気が違うのかもしれません。

 これはやはり同じ演劇人として劇場へ出向いて舞台や客席を改めて調査しなければなりませんね。

 そして、これからより一層、オペラが先陣を切って舞台芸術を引っ張っていって頂きたいと思うのです。音楽、美術、演技、今さらながら劇場芸術の集大成としてのオペラをますます輝かせなければ。そのためにはどうしたら良いのでしょう。私も考え続けます。皆さまも。

篠井英介(ささい・えいすけ)
◎俳優。石川県金沢市出身。日本大学芸術学部演劇学科卒業。花組芝居を経て、現代劇の女形として、そして唯一無二の存在として、多方面で活躍をしている。舞台の代表作に「欲望という名の電車」のブランチ役、「サド公爵夫人」など多数。今秋、女形シリーズの第三弾として「サロメ」に挑む。現在、NTV「ザ・クイズ・ショウ」(毎週土曜日21:00〜)にレギュラー出演中。
公式サイト http://duncan.co.jp