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オペラを楽しむ

オペラって…
「オペラが近づいて来る」 吉行和子


 4年前から「歌に生き、恋に生き」というタイトルで、オペラ歌手の方が歌うアリアと、その解説や詩の朗読、オペラに関するトークなども交えた、コンサートに参加しています。
 友人の冨士眞奈美が、大のオペラファンで、以前からオペラの話になると大きな目がいっそう大きくなり、きらきら輝きだし、一体これは何だろうと、興味は持っていたのです。
 しかし、私自身がオペラに近づくのには時間がかかりました。
 中学生のとき観たオペラが、何だかよく分からず、私の関心から遠のいてしまっていたのです。
 今思うととても残念です。あの時、オペラ好きの人が側にいて、導いてくれたら、きっと私は早くからオペラを好きになっていたでしょう。友人は大切です。
 そして冨士眞奈美さんの指導のもとに、何度かオペラを観に行くようになり、曲にも馴染むようになり、満を持してオペラコンサートに行きつきました。
 アリアばかりを聴くのは“いいとこどり”なのです。
 でも、それが身体に染み込みはじめると、今度はオペラ全体を観て、そのアリアがどこで流れるかを知りたくなり、それを体験すると、何とも言えない幸福感が充ちてくるのが分かりました。
 遅かったとはいえ、ここに行きつけたのは幸せでした。
 これからの人生、楽しくなるに違いありません。
 いつも舞台に行くわけにもいかないので、DVDやビデオを集めて、時間のある時は、聴いたり観たりしています。
 年に2回ある、初台のオペラシティでの「歌に生き、恋に生き」のステージが待ち遠しくなって来ています。
 海外に行っても、時間を作ってオペラを観ることにしています。
 今までで、やはり一番印象が強かったのは、ヴェローナの野外劇場で観た『トスカ』です。
 ラストでトスカが身を投げた時、暗闇の中に永遠に消えてしまったような錯覚に落ち込みました。
 音の響きも素晴らしかったし、観客の反応も感動的でした。こんなにオペラを好きな人達で埋め尽くされた場所で、その人達と一緒にオペラを鑑賞したという思い出が強く残っています。
吉行和子(よしゆき かずこ)
◎女優、エッセイスト。東京都生まれ。1957年、舞台「アンネの日記」のアンネ・フランク役でデビュー。「密の味」岩松了演出では紀伊国屋演劇賞を受賞。舞台の他にも、映画、テレビ等で活躍。男女問わず幅広い層から支持を得ている。友人の冨士眞奈美と共に「歌に生き、恋に生き」と題し、オペラトークイベントを行っている。