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オペラを楽しむ

「オペラの楽しみ」 室田尚子

第2回「オペラ劇場の歩き方」

 

 何とかチケットも手に入れて、さあ、いよいよ憧れのオペラを観に行く日がやって来ました。初めて訪れたオペラ劇場で、いったいどのように振る舞えばいいのか。知らずにマナー違反をして、他のお客さんににらまれたらどうしよう……。そんな心配をしていたら、楽しいオペラも充分楽しめませんね。でも大丈夫。ちょっとしたコツさえ押さえておけば、オペラ劇場を歩くのはそれほど難しいことではありません。せっかくオシャレして、オペラという「非日常空間」を味わいに来たのですから、音楽だけでなく、劇場も丸ごと楽しんでしまいましょう。

 

(1)スマートな入り方
 「ええっ? 入るのにもコツがいるの!?」と思ってしまいましたか? そうではないんです。オペラ劇場はびっくりハウスではありませんから、エントランスは普通に通ればいいのですが、ここで重要なのは、何時頃に入ればいいのか、ということです。通常、劇場の開場時間は、開演の30分ほど前に設定されています(オペラの場合はもう少し早い場合もあります)。初めて劇場に行く場合、開演時間ギリギリに飛び込む、というのはおすすめできません。バタバタと慌ただしい中で幕が上がってしまっては、せっかくの楽しい気分も半減です。ここは、充分余裕をもって劇場に到着しておきたいもの。とはいうものの、開演時間の前からエントランスの前に行列を作るのは、あまりスマートとはいえないでしょう。開場時間を少し過ぎたあたりで劇場に到着するのが、もっともスマートな入り方といえます。
 それから、劇場のエントランスでは、必ず他の公演のチラシを配っています。ビニールの袋に入れられたチラシの束は、無料でゲットできる重要な情報源。もらっておいて損はありません。

 

(2)何はともあれ座席を確認
 エントランスでチケット係にチケットを渡すと、半券を返してくれます。これは、途中で外に出る時に必要なので必ずとっておいて下さい(途中で外に出るケースについては後ほど)。チケット係は、あなたの座席番号を確認して、「○○番扉です」とか「まっすぐ進んで右手の扉からお入り下さい」などと教えてくれます。そう、ホールには扉がたくさんあり、自分の座席になるべく近い扉から入らないと、広いホールの中を座席を探してさまよい歩くことになります。とはいっても、エントランスを通るのはほとんど一瞬ですから、チケット係の言葉を聞き逃してしまうこともあります。その場合には、ホール入口に必ず係員がいますから、チケットを見せて「どこから入ればいいですか」と聞いてしまいましょう。係員は親切に教えてくれますし、頼めば、席まで連れていってくれます。

 

(3)開演前にしておくこと
 時間が前後しますが、季節が冬で重いコートを着ている場合、あるいは大きな荷物がある時は、座席に着く前にクロークに預けるのを忘れずに。劇場の座席はそれほど広いスペースではありませんから、大きな荷物やコートはとても邪魔になります。
 さて、まず自分の座席を確認したら、その後は開演まで自由な時間です。くれぐれもこの時、トイレに行っておくのを忘れないように。オペラに限らず、クラシックのコンサートはいったん始まると、休憩時間まで席を立つことはマナー違反です。他のお客さんの迷惑にもなるので、充分注意してください。 開演前にプログラムをゲットしておくことはとても重要。特に、予習をしてこなかった時は、プログラムが大いに役立ちます。あらすじや見どころの紹介の他に、当日出演する歌手のプロフィール、また簡単な読み物なども掲載されています。

 

(4)ホワイエの楽しみ方
 劇場ロビーのことを「ホワイエ」といいます。ホワイエでは、プログラムの販売の他、オペラグラスを貸し出していたり、飲み物を売るカウンターがあります。よく休憩時間になっても席に座ったままの人を見かけますが、私は、これはとてももったいないと思います。欧米では、オペラの休憩時間には必ずホワイエに出て、シャンパンを飲む習慣があります。日本の劇場でも、シャンパンやワイン、ビールなどのアルコール類があるので、お好きな方はどうぞ楽しんでください。シャンパングラスを片手に、劇場に来た人たちを眺めるのもまた、楽しいもの。思わぬ有名人が歩いているのを見かけたりするかもしれません。ただし、アルコールは酔わない程度に留めておきましょう。
 最近では、ホワイエは禁煙のところが多くなっています。休憩時間にどうしても煙草を吸いたい場合はいったん外に出なければなりませんが、この時は半券を持っていくのを忘れずに。
 ホワイエで売られているのど飴は、包み紙の音が出にくいものが主流。オペラの最中に咳き込みそうになって、慌てて飴を出したら紙の音がガサガサ、というのでは周りのお客さんにも迷惑がかかります。咳が出そうだな、と思ったらぜひ買っておきましょう。
 また、ホワイエでは、当日の演目を収録したCDや歌手のCDが売られていることもあります。もし当日感動したら、ぜひCDを買って帰って家でもう一度聴いてみてください。劇場では気づかなかった思わぬ発見があったりして、オペラの楽しみがぐっと広がることでしょう。