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オペラを楽しむ

「実相寺監督と私」

加藤礼次朗(漫画家)
表紙・本文イラスト:『魔笛』衣裳スケッチ(初稿)




年に数回、不定期に行われる実相寺監督を囲んだ
交流会“実相寺会”での1コマ。映画界、音楽界を
問わず、様々な業界から人が集まる異業種懇談会
でもある。ここから新しい“何か”が生まれることも・・・。
実相寺監督との出会いは古く、もう十年以上前に遡ります。私の兄貴分である映像作家河崎実氏が、自作『地球防衛少女イコちゃん』の題字を監督にお願いしたと知り、長年“実相寺ワールド”の虜だった私は「会わせてくれ!!」と懇願して無理矢理紹介して頂いたのです。つまりは、ただの“アブナイ”1ファンに過ぎなかったワケですが、初めてお会いした時に「名刺代わりに」とお渡しした私のデビュー作が、ベートーベンの伝記漫画だったことが、クラシックに造詣の深い監督のココロをどこか擽ったのでしょうか?その後、監督の原作で劇画を描かせて頂いたり、監督の著書『ウルトラマンに夢見た男たち』の挿画を担当させて頂く機会を得ました。が当時の私の画力は?といえば・・・続刊『ウルトラマンの東京』の挿画を、監督御自身が描かれていらっしゃることをもって“推して知るべし”といったところでしょうか・・・。
 そんな私が、なぜ『魔笛』の衣裳デザインという大役を仰せ付かることとなったかといえば、それは私の“TOYコレクション”という個人的趣味と深く関係があるのです。最近の“オモチャ”は非常に造型が優れ、海外にも熱狂的なコレクターがいるほど・・・そこで私は「こんなモノが最近売れてますよ」と、ウルトラマンの(監督が担当された回に登場した)怪獣の人形をプレゼントしたところ、それが監督のコレクター魂に点火してしまったのでしょうか?もともと収集癖があり「小さくてカワイイものに囲まれていると幸せ」という監督の御自宅は、あっという間に(以前から集めていらした)Nゲージ等鉄道模型に加え、怪獣・漫画やアニメの美少女キャラ人形に占拠されてしまわれたと聞きました。(その原因を作ってしまった私としては、監督の御家族に対しまったくもって顔向けできません・・・)オモチャ情報誌にコラムも連載されるようになり、年に数回行われる新作発表イベントへも足繁く通われ、そうした熱気の中で今回の『魔笛』のイメージは徐々に熟成されていったのだと思います。
 
photo
※このスケッチは没になりました。
 
突然、監督から「衣裳デザインを頼む」ともちかけられ、「なぜ私が・・・!?」と思いましたが、同時に監督の意図が私には何となく理解できました。常に“ある明確な意図をもって”既成の枠を飛び越えた演出をなさる監督のこと・・・今回の場合、衣裳に求められているそれは、恐らく現代的なアニメやゲームのマンガ感覚・・・なおかつ人形化しても見映えのする立体感ではないでしょうか?(もし、間違っていたらごめんなさい)そこで私も、あまり「オペラ」ということは意識せず、あえてマンガのキャラクターとしてデザイン作業をすすめました。私が講師を務めているマンガ専門学校の生徒達にも協力して貰い、なかなか面白いものが仕上がりつつあると思います。(特にパパゲーノは、「鳥の意匠をできる限り外して」という監督からの強い要請もあり、かなり意表を突いたものになりそうです)私自身、今回の作業を通して“タミーノが迷い込んだ異界”を冒険させて頂いたような気持ちです。その気持ちを、舞台を通じて皆様にも味わって頂けましたら、これに勝る幸せはありません。そして、十数年目にして“実相寺ワールド”への再挑戦・・・いえ、恩返しの機会を与えて下さった監督に、心から感謝いたします。
 
実相寺昭雄監督「姑獲鳥(うぶめ)の夏」製作発表記者会見
(05年7月、東京[渋谷東急]他、全国超拡大ロードショー!)
(c)日本ヘラルド映画
 
 
  Profile
加藤礼次朗 (かとう れいじろう)
1966年(昭和41年)東京生まれ。漫画家。1986年描き下ろし単行本『まんが音楽家シリーズ ベートーベン』でデビュー。日本工学院専門学校八王子校アニメーション科コミックコース講師。現在角川書店刊「特撮エース」で『幻の怪獣を探せ!!』、徳間書店刊「月刊ハイパーホビー」でオモチャコラムを連載中。代表作『戦え!筋肉番長』『めぐみの春』『おやじマン』他

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